DA☆メイドinスズキ

 朝日の光を感じて目を覚ます。

 メイドの朝は早く、日の出と共に一日が始まるのだ。

 まだ眠り足りず、目を擦りながらベッドから起き出す。

 昨夜は、お気に入りの作家が新刊を出したため、それを読んでいて寝るのが遅くなってしまったのだ。


 読んでいたのは、恋愛小説。


 お互いの性別の壁を乗り越えて、燃え上がる恋。

 数々の障害にも負けず、想いを成就させる男達の描写が綺麗で、とてもロマンチックで、たまらない作品です。


 雅で耽美な登場人物が絡み合う描写は、鼻血不可避。

 あぁ、たまらん…………


 はっ、いけない、いけない。

 もうお仕事の時間なんですから、支度をしなくちゃ!


 私の名はベル。

 ファーゼストからスズキ領にやってきた三人のメイドの中の一人です。

 スズキ領でのお仕事は、槍♂guyのある楽しい物で、充実した満足の行く、鼻血必須の毎日を送っています。





 第二訓練場の中を怒号と共に、男達の体液が飛び散る。


「構えぇぇぇ!♂突けぇぇぇ!!」


「もっと腰を入れて♂突かんか!そんなんで、れるほど、辺境は甘くねぇぞ!!」


 あちらでは、教官が怒鳴り散らしながら、新兵に槍♂の扱いを教えている。


 ハァハァハァハァ。


 なんという激しい訓練。

 ベテランが、新兵の槍♂使いをここまでなんて、やはり辺境だけあって猛者が集まっているようだ。


「オラオラ、そんなへっぴり腰で、俺の○○ピーを抜けると思うなよ!」


「けっ!テメエこそ、もっとしっかり構えやがれ!もっとピーを締めねぇと、(意識を)ブッ飛ばすぞ!!」


 こちらでは、ベテラン達がお互いの技(意味深)を競い合いながら、お互いを高め合っている。


 二人はどこまで、どこまで高まり合っちゃうのかしら!?

 きっと、天の果てまで達してしまうに違いないわ!


 ハァハァハァハァ。


「ベルさんお願いします!!」


 そんな中、慌てた声で私の名前が呼ばれる。

 怪我をした新兵が、数人のベテラン兵に連れられて、私の元にやって来たのだ。

 見ると、腕が変な方向に曲がっている。


 イベントキター!


 新兵くんには気の毒だが、スズキ領の訓練では、骨折程度は日常茶飯事。

 彼もきっと、その内に慣れてしまうだろう。


 回復魔術を修めている私達は、こうして良くスズキ家の訓練に呼ばれるのだ。

 どれだけ激しく(ナニが)ぶつかり合っても、私達が居ればすぐに(ナニが)治るという事で、スズキ家の訓練は一層激しいが行われている。


 本当に鼻血不可避のお仕事である。

 興奮を抑えながら今日も怪我を治していく。


「少し我慢していろよ、すぐに終わるからな!まずはピーぞ」


 ……ありがとうございます。

 そして、ご馳走様です。


「よし、ぞ!!」


 そう言うと、ベテラン兵達は新兵の体を寄って集って押さえ付け、事に及ぶ。


「アッーーーーーー!!!」


 新兵が、堪らず矯声を上げる。


 その声に、思わず胸がドキドキしてくるが、今はそんな事をしている場合ではない。

 急いで回復魔術を掛けて、新兵の(・・)を癒す。


 すると、先程まで赤く腫れていたアレが、みるみる治っていき、新兵の呼吸も落ち着いてきた。


「ふぅ」


 賢者タイムである。


 やはり、どれだけやっても、この興奮には慣れそうに無い。

 これも私の仕事の一つなので、これからも頑張らなくてはならないのだ!







 夕方、食堂から帰ろうとしていた時の事だ。

 廊下の真ん中で、ぽつんと佇む一つの人影を見かけた。


 髪の毛から肌の色まで、何から何まで透き通るような白色をした儚げなその人物は、先日スズキ家にやってきた、ドワーフのバッケたんだ。

 大体十二、三歳くらいの少年に見えるが、彼は確か十八のはずで、成人している。

 彼は、妖精としての血が色濃いためか、体毛は薄くドワーフらしくない。

 体の成長も止まっているらしく、その姿は儚げで、正しく妖精のようである。

 幼い頃から体が弱く、家族以外と触れ合った事が少ないらしく、年齢の割に言動が幼いので、その見た目も相まって私の中では『バッケたん』と呼んでいる。


 …………つまり、合法の美ショタだ。


「バッケくん、どうしたの?」


「あっ、メイドのお姉さん。その、ちょっとお手洗いの場所が分からなくなっちゃって…………」


 ふぉぉぉ、お姉さん!バッケたんにお姉さんと呼ばれたおぉぉぉぉ!!

 困ってるバッケたん可愛いお!お手洗いに行けなくて、赤くなってモジモジしているバッケたん、マジ可愛いおぉぉぉぉ!!


 そう言えばバッケたんは、生まれつき物が見えづらいんだっけ?

 これはお姉さんが一肌脱ぐしか無いようです。


「それじゃあ、お姉さんと一緒に(イイトコに)行きましょうか」


 フフフ、に連れて行くとは言っていないので、嘘ではない。


「うん!」


 眩しい!

 バッケたんの純粋なその瞳が、私には眩し過ぎるぅぅぅ。


 ちなみに、私の部屋に行く途中にお手洗いがあってしまったため、お持ち帰りは未遂となった。

 ガッデム!





 夜、一日の最後の仕事を終えようと、廊下を歩いていると、不意に声が掛けられた。


「ずいぶんとが出るね」


「リ、リオン様!」


 声の主の顔を見て、私は慌てて頭を下げる。


 何が出るって!?

 ナニが出るって!?


 ニヤケ顔がバレないように、急いで顔を伏せた。


 この方は、私達の主であるライアン様の兄君であられます。

 兄君であられます!(コレ重要!)

 リオン様は、時々こうしてライアン様やその領地の様子を見にいらっしゃるのですが、ライアン様の事が心配なのか、何度も足をお運びになられているのです。

 きっとライアン様の事がしょうがないのだと思います。

 リオン様は、ライアン様の兄君であられるのにです!!


「あぁ、そんなに畏まる必要は無いよ。特に今日はプライベートな用事で来たからね」


 それに、メイドの私にもこんな風に声を掛けて下さる。

 気さくな顔の下に、どんな欲望が渦巻いているのか想像すると、気が気ではありません。

 なので、私はいつも、この方との会話をついついしまいます。


「ふふふ、が良くて羨ましいです」


 …………ウホッ!


「そ、そうかな?今日はコイツでライアンと一杯ヤろうと思ってね」


 そう言って、リオン様は手に持っていたワインの瓶を掲げて見せて下さいます。


 ……何…………だと!?


 で、ですとぉぉ!?


 フォぉぉぉぉぉぉ!!


 頂きました!

 言質を頂きましたぁ!!

 今日のM(マイ)V(ベスト)P(ピー)は、この一言に決定です!!!


「それでは後で、何か摘まめる物を、お持ち致しましょうか?」


 これは出歯亀るしかありません。

 こんな美味しいイベントを逃してはなるものか!?


「い、いや、レーラさんに頼んであるから大丈夫だ」


 リオン様はそう言って苦笑いをすると、廊下の向こうへ、そそくさと去って行った。

 私は、そんなリオン様の姿を見詰め続ける。


 あぁ、きっとこれからライアン様との行為に耽るに違いないわ……


 不意に、昨夜読んだ小説の内容が思い出される。

 性別の壁を乗り越えた二人が、組んず解れず、めくるめく快楽の夜を過ごす……


 小説の登場人物に二人を重ねている事に気が付き、興奮しすぎて鼻の奥が熱くなってくる。


 違ッ、違うのこれは!

 別に私は、どっちがどっちなんて考えてないの!?

 受けとか攻めとかはどうでも良くて…………


「そ、そうだわ。早く仕事を終えて、なんとか出歯亀しなきゃ」


 私は、先程までの妄想を誤魔化すかのようにして、仕事を終わらせることにした。





 今日も一日が終わる。

 ベッドの中で、今日一日の事を思い出す。


 スズキ領での生活は、忙しくはあるものの、充実した非常に楽しい物である。


 明日も良い一日でありますように。


 今日という日が良き一日であった事を感謝し、明日も同様であるように神に祈る。


 …………それと、もし叶うなら、明日もバッケたんとお話ができますように!


 こちらは、どちらかと言うとルドルフ様に祈る。


 こうして、一通りの祈りを捧げると、早々にベッドの中に入った。

 メイドの朝は早い。

 明日も一生懸命頑張らなくてはいけない。


「おやすみなさい」


 布団を被ると、すぐに睡魔が訪れた。

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