第6話 僕の親友 (side:高木 康太)

僕には幼稚園の頃からの親友が居る。

彼と初めて会ったのは、忘れもしない“ひろし様御光臨”事件の翌日だった。

それまで僕は幼稚園が嫌いだった。

女の子はうるさいし、べたべた触ってくるし、その上行き成り喧嘩を始めたと思ったら「こうた君の為なの」って意味わからない。

なんで僕が先生に叱られないといけないの?管理出来ない僕が悪いって、理不尽過ぎない?

だから僕は幼稚園が嫌いだった。本当は行きたくもなかったんだけど、お母さんが働いているし、お家で一人でいる訳にもいかない。

仕方がなく「今日も理不尽に耐えるのか」と黄昏ていると、外が騒がしくなっているのに気が付いた。


窓の外には衝撃の光景が待っていた。

亜麻色のウェーブの掛かった髪、どことなく色気の漂う目元、シャープさの中にも子供らしさを残した輪郭、すらっとした手足。

どこかの国の王子様と言われても納得してしまいそうな男の子が、女の子たちに囲まれていた。

事もあろうに、彼はこれだけの状態にありながら爽やかな笑みを浮かべ、「僕なんかそんなに褒められたものじゃないよ?僕のことは気軽に“ひろし”って呼んでね♪」などと対応しているではないか。

只々凄い、僕には無理です。

理解出来ない生物を見た時の様な、何とも言えない怖気おぞけを感じた僕は、一人自分の席に戻るのであった。


その日から僕の環境は変わった。

今まであれほど群がって来ていた女の子が、ピタリといなくなったのだ。

初めは何が起きたのかと思ったが、答えは簡単だった。皆してひろし君のところに行ってしまったからだった。

僕は混乱よりも安堵の感情が上回ったのか、ここ最近感じたことのないゆったりとした時間を過ごす事が出来た。


次の日になっても状況は変わらなかった。バラ組の女の子たちどころか他のクラスの子も先生たちも、更にはお友達のお母さんに至るまで。

皆してひろし君に群がっていた。

なんか女の人って怖い。

そんな中、隣のユリ組の男の子が声を掛けて来た。


「ねぇ、一緒に泥団子作らない?」


僕は今まで男の子と遊んだことがなかった。それどころか男の子とお話ししたのって初めてじゃないだろうか?

彼はこれと言って特徴のある顔立ちはしていなかった。本人曰く、「これでも中の下くらいの顔立ちだ!」との事らしい。

「じゃあ君の言う下の顔立ちって何?」って聞いたら、「あれは只管ひたすら不摂生。自業自得の結果」と辛辣なことを言っていた。

君って結構毒舌だよね?


そんな彼とは結構気が合った。彼はなぜか僕のことを師匠と呼んで、事あるごとに「さすが師匠、一生ついていきます」と言う。

多分テレビの影響かなんかだと思う。


そんな彼だが、たまにひろし君見ながら「ひろし君には助かってるよな」って呟くんだ。

でも君、すごい悪そうな顔でにやけるの止めた方がいいと思うよ?

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