第7話 僕の親友(2)(side:高木 康太)

小学校に入った。

これまで通っていた幼稚園とは規模が違うため、初日からどうなるんだろうと入学式前日はあまりよく眠れなかった。

正直、僕はあまり女の人が好きじゃない。はっきり言えばちょっと怖い。

欲望に忠実というか自分に正直というか…、兎に角”つつましさ”という言葉を覚えてほしい。

お母さんに買ってもらった現代用語の基礎知識って本にもしっかり載っているのになんでみんな知らないんだろう?


そんな話を親友に電話で話すと、「ひろし君がいるから大丈夫じゃね?」っと軽く流された。

僕はひろし君もあまり好きではない。

彼って時々すごい上から目線というか、見下したような目でこっちを見るんだ。

僕に対してはそれほどでもないけど、親友を見るときの目はそれはもう鼻で笑う時の様な、それって子どもがしていい目つきじゃないよね。


親友にそれとなくこの話をした事もあるんだけど、「流石ひろし君、解っているな~。」とどこ吹く風。その時の親友の悪そうな顔ったら。

うん、この二人は似たり寄ったりだ、この件には触れないでおこう。

固く心に誓うのだった。


入学初日はみんな緊張していたのだろう、自己紹介と簡単な施設の説明で特に問題もなく終わった。帰りの時間に何人かの女の子から、今度どこかに遊びに行こうと誘われたが、「じゃあ、みんなが学校に慣れてクラスも落ち着いたらね♪」と返しておいた。

これってひろし君がよく女の子に返事するときのやり方だよな。

僕も意外に影響されてたのかもしれない。


変化はすぐに表れた。

翌日の休み時間、別のクラスに成ってしまった親友の教室を訪ねると、やけにがらんとしていた。親友に挨拶をすると「流石はひろし君、やってくれますわ♪」と満面の笑み。

何の事?っと尋ねると、彼はおもむろに携帯の画面を見せてくれた。

そこにはさわやかな笑みで「今日から小学1年生!!緊張するけど頑張ります。」と投稿されたひろし君のSNS記事が。校門の桜の木の下で撮った写真や、教室で女の子と談笑中の写真など、複数枚アップされていた。

驚いたのは”いいね”の数。100万いいねっていったい何?

ちょっと思考が追い付かないんだけど?

「そんでその結果がアレ。」

親友はゆっくり立ち上がると廊下からひろし君のいる教室を指さした。

僕も同じく教室から出ると、そこには昨日一緒に入学してきた女の子たちが廊下にはみ出るくらいに群がる姿が…。

ナニコレ、コワインデスケド。

「今は10分休みだからいいけど、昼休みになったらシャレにならないんじゃないかな~。」

何か恐ろしい事をのたまう親友。

「だから昼休みは校庭に避難しようか♪」

こうして僕の、いや僕達ひろし君以外の男子の昼休みの予定が決定したのだった。

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