第2話 ひろし様のおかげです。
小学校1年生の頃は大変だったな~、ひろし君のクラスの男の子は。
毎時間の休み時間になると、ほかのクラスの女の子が押し寄せる。
昼休みになれば上級生のお姉さま方が加わって、通勤電車かバーゲン会場の様相。
同じクラスの女の子はそんな他所の女子にイラついたり、優越感に浸ったり。
同じクラスにいるのにほぼ空気状態の男子たち。
まあ、そんな状態だったんで、鬼ごっこに誘ったときはやたらはしゃいでたっけ。
「幼稚園の頃はクラスの中心だったのに」ってぶつくさ言ってたけど、僕なんかひろし君と同じ幼稚園だったからそんなんしょっちゅうだったよ?
認識されずバスに置き去りにされた事が何度あったか。
真夏の車内はサウナより熱いって知ってる?
よく生きてたな僕。
そんな彼らにつらく当たるのもかわいそうだったんで、上級生のお兄さん方に相談したら、とてもいい笑顔でありがたいお話をしてくれたよ。
曰く、
4年生から6年生のお兄さんたちが全員深々とうなずいてるんだけど、いったい何があったんだろう。そう言えば上級生のお兄さん方って人数少ない様な?
なんでも第二次性徴期を迎えた女子は男子に対するアプローチが過激になり、過度の接触、セクハラ等の性的被害を受けて、不登校や引きこもりになる男子が後を絶たないとか。これは全国規模で問題になっていて、<結婚したくない系男子>ってのが国会でも取りざたされてるんだって。
上級生のお兄さんたちもついこないだまではサバンナでライオンに囲まれたガゼルのような日常だったらしいんだけど、ひろし君の登場で状況が一変したんだってさ。
今では休み時間になると女子たちがいくつかのグループに分かれてひろし君について語り合ってるんだって。スナップ写真(これって盗撮じゃね?)を持ち寄ってはどの角度がいいとか憂いのある横顔がたまらないとか?
昼休みになればほぼ全員がいなくなるし、平和って素晴らしいよね。
でも、そんな女子の突貫を受けてるクラスの男子(ひろし君を除く)はたまったもんじゃない。僕たちは限界だ!!って言うから、「じゃあうちのクラスに来たら?休み時間はガラガラだよ?」って言ったら、ぽか~んって顔をした後全力で抱き着いてきたよ。
そんな泣きながらありがとうって言わなくっても、そんなに辛かったん?
そんなんありーので昼休みに鬼ごっこをしていたら、3年生のよういち君が「普通の鬼ごっこじゃつまらん!」って言いだして、増殖型鬼ごっこになったんだよな。
五月の連休明けにはこれが定番の遊びになって、なぜかSNSにアップするって事になって、それを見た不登校児童や引きこもり児童がちらほら参加する様になってって…これってどういう事?
君たちお家でびくびくしてたんじゃないの?
なんで塀を飛び越えて来るの?
息切れで倒れてるのに満面の笑みって変態さんなのかな?
そんなこんなで夏休み前にはほとんどの男子児童が参加する一大イベントになってたんだけど。
全校男子児童90名に全力で追い掛けられるって恐怖以外の何物でもないんだが。
我、小学1年生ぞ、お子様ぞ!
しかし、逃亡王の座は
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