目隠し

【目隠し】

「さて、私は誰でしょう、ノーヒントでどうぞ」

「いやっ、だっ、だれやねん。目隠しされてたらわからんて。つい前日にごっつえー感じをみてたせいか浜ちゃんばりのツッコミがでた」

「はい、じゃあ、いまから初恋の記憶を消しますー!」

「うおーやめてくれ! おれのマイメロキャラパンチラリドキッの思い出がァー」

「はいっ!無くなりました」

「思い出せない。僕の初恋が。2番目のメイルシュトロームちゃんしか思い出せない。息が臭かったあの子……。初めては……誰だ。終わった……俺の人生……短かった」

「はい、気を取り直してもう一回! 私は誰でしょう!」

「誰でしょう、中川翔子! しょこたんだ!」

「ぶっぶーぅ」

「あなた、しょこたんと繋がりあるの?」

「ふぁ、ファンだから。あんなYouTubeで湧いた羽虫とはわけが違うから!」

「これは、記憶喪失程度じゃだめね」

「待ってくれ、ヒントをくれよ、僕らを見てくれてるオーディエンスだっているんだろう、フウフウ!」

「いえ、あなたと二人っきりだわ」

「謎が謎を呼ぶ! 未解決少年!コンナン!犯人はこの世界にいるっ!」

「ふっ。一生、終わりそうにないわね、それ」

「恋人の毛根無子が解決する物語だからね」

「異色カップル?」

「いつだって、カップルってのは似たり寄ったりってことだぜ」

「そうね、はい! 時間切れ! 次はあなたの2番目の恋人真水セイリちゃんの記憶を消しましたぁー」

「ぞ、ぞんな。僕を構成する何かまでなくなってくる気がするぜ」

全く目隠しで誰だかわからない、ヒントがほしい。

この声、そして僕の情報を知る誰か。全くわからない。

途端、耳に生温かな吐息が。

「いいわ、じゃあ一つだけ」

「おい、みみみみみみみだけは弱いんだ、やめて。お、おかしくなるから。あぁぁあっぁあぁあ」

「だめ、やめない」

吐息ごと耳に吹きかけられる。

ん?なんだ、こ、この感じ。この吐息の暖かさ、呼吸感。

どこか懐かしさが。

「ちょ、ちょちょちょちょっとまってくれ。なんか思い出せそうな気がする」

「……ちょっと早いわね。まあいいわ、答えてみて」

「僕は何歳だ?」

「……あんた、自分の年齢も忘れたの? 見た目は中学生か高校生だけど」

「なんで曖昧な答え方なんだ?」

「さぁね。そろそろ私が誰かわかったかしら?」

 今、やっと冷静になった。ここがどこで、今がいつで、僕が誰か。

それが一番大事なんだって。

「それは自分がわかればわかるよ」

「ふ、ふーん、それであなたは誰なの」

「鏡だ。それも長年人を見てきた古鏡」

「正解であって、不正解」

彼女が僕の目隠しをとって見た姿は、しわがれた手に鏡があった。

それを見た僕は……白い髪が有象無象に張り巡らされ、顔には皺が、

やせ細った弱弱しい老人だった。

「あなたは、過去に戻ってしまう病気なの。私と二人で学校生活を送ってた時が

一番楽しかったのね」


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