グロッソの剣

第20話 苦薬

 彼女はその冷たい目でミカゲを見下ろしている。


「すまないけどポーション一万個なんて今からじゃ用意できないよ、そんなの何に使うんだよ」

「魔物の討伐だ。そのために必要らしい」

「らしいって…えっと、急ぎなら今ある上級ポーションすべて差し上げます。急いで素材とってきてそちらに向かうこともできますけど…」

「竜胆さ~ん! 大丈夫ですか~?」


 女が来た方向から背の低い見た目は子供のおんなのこが大声でこちらに来た。


「ヴィオラ。どうした、お前は準備しなくてもいいのか」

「やっぱりなんか勘違いしてる…」

「勘違いとは、魔物の討伐に上級のポーションが一万必要なんじゃないのか」

「一万なんてそんなすぐに集まりませんよ。ポーションを普段提供してくれていた店がグロッソを離れたから売ってくれるところを見つけるため下見に行って来いってだけで魔物退治とは関係ないですよ。ポーションも今日買い付けるわけじゃないんですから」

「……えーっと、一万個はもういいですか?」

「あっはい、大丈夫です。ですけどちょっと話聞いてもらえませんかね?」

「さっき言ってた売ってくれるとこがなくなったからここも契約先の候補になるかもってことでしょ、いいよ別に。試しに1000本ぐらいならタダでいいし」

「いや、1000も悪いですよ。試飲なら団長と私で2本だけでいいんです」

「いえ、人によっては味が合わなくて飲めないこともあるので、できるだけ飲んでもらったほうがいいんですよ。こちらからしても」

 ポーションに味なんてないけど多分この世界の住民からしたら旨い不味いがあるんだろうな。



  ※ ※ ※ ※



「今日はありがとうございました。感想と契約などはまた後日」

 

 背の小さいほうは城へと戻っていったが、女のほうはこちらに視線を向けている。


「すまなかった。迷惑なことを言って」

「言われたときは驚いたけど迷惑なんて思ってないよ。誰だってそんなことありますし」

「けど私、いつもこんな感じで…」

 ……。


 励ましになったのかわからないままその場から去った。



 ※ ※ ※ ※



 その日の夜。


「おい! お前が飲んでみろって言ったこの薬毒くっらたんだが!?」

「それは毒つく代わりに攻撃力上がるやつだから。どうだった?」

「毒ついたことに驚いて戦闘なんてしてねえよ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る