19話 白夜
男は剣を振り上げその刃はミカゲのほうへと振り下ろされる。
剣は首元を切り裂いた。剣先は胸まで下され、ミカゲは…白い影となり宙に舞った。
やがてその白は霞んで消えた。
「なっ…どうなってる!?」
「お前が誰とか、何のためにこんなことしたとか、全部どーでもいいんだよ!」
こいつの目的が何なのかはわかんねぇがどうでもいい。このクエストがどうしたら終わるのかもわからない今はそんなことを考える必要はない。思い出せ、このクエストの攻略法…そう言えばこのクエストにはなぜかクリア方法が書かれてなかったな。つまりはクリア者0ってことか、絶望的だな。
「待て! 逃げるつもりか!」
「逃げる? 見逃すの間違えだろ。俺は急いでいるんだ」
ミカゲはその場を去ろうとした。
「そうはさせるか!」
ミカゲの足元に黒い影が鞭のようにしなり顕現した。それは足に巻き付きミカゲの行動を阻止した。
「はぁー、さっきので学ばなかった? こういうの効かないから」
先程と同じく白い影となり姿が消えた。実績『蛇神』を達成したときに手に入る消費アイテム、白影の効果。
ミカゲはその場から逃げ出し外へ出た、だがそこには兵士の大群と先程もいた日蝕のメンバーが待ち構えていた。
「っ…」
アイテムももう尽きた、この数は流石に無理だな。
ミカゲはあっけなく捕まり死ぬか牢に戻されると思っていたが別の場所に案内された。
さっきいた牢は地下だったらしく案内されている間は上に上がっていた。
目的の場所は扉が両開きになっていて大きい、周りもどこか豪華だ。
その扉の向こうには日蝕のメンバーであろう少年が、一人部屋の椅子に座って紅茶を嗜んでいる。
「やぁ。先程ぶりだね、ミカゲくん」
クエストクリアが優先だったが目標が変わった。
「どうやら俺は色々と知らなくちゃいけないみたいだな」
「まず何から話そうか…、何が聞きたい?」
「さぁ? あの訳のわからない男のせいで何がなんだか分からなくなった」
「そうか、なら簡潔に説明しよう。君は多分僕ら日蝕が分からなくなってると思うんだ、その男のせいでね。結論から言うと僕ら日蝕はリトを目の敵にしているわけじゃない。もちろん恨んではいるけどね。リトとヘケトは共存している、日蝕は裏社会ではリトを滅ぼそうと企む組織だが実は違う、じゃあなぜ君にあの話をしたのか……ヘケトは昔ある人に救われた、リトに湖を奪われてでも努力し続けていた民のもとに神が降り立った。ちなみに比喩であって神ではないよ。その人はヘケトの民に指示を下した、勿論最初は誰も振り向かなかった。当たり前だ。だがその人は一人でもヘケトのために力を貸してくれた。それから人々はその人について行った、どんなときもね。それから時が過ぎ子孫も生まれる、だがその人の子孫であるお方がある日を境に消えてしまった。僕らは、その人を探すために君をここまで連れてきた。正確にはその人が奇妙な病気や謎の病にかかるんだ、過去に記憶喪失もあったらしく体が変わるのもありえなくはないだろうから似ている人をとりあえず連れてきたんだ。どう? わかったかな」
「ふざけるなよ…、全部人探しのためだったのか。何もかも」
「ごめんよ。僕らに敵意はないんだ」
何を言っているかが理解できなかっただろう。彼らは人探しのためだけに『ありもしない組織』を作ったのだから。
あっけなく終わった。裏に何があるかと思いきやただの人探し、これでクリアとかクソゲーだろ。
それにしても、まだ夜なのに空が明るく見える。ずっと暗い場所にいたからか…、空気が美味しい。
その後は一度グロッソに戻り錬金術に専念することにした。
それから1週間後、Lvを25まで上げ挑戦可能になったダンジョンに潜り続けポーションの素材を獲得し続け、一部では良質すぎるし価格も手頃だからと評判がいい。
「なぁミカゲよ、君の作るポーションをリトに売ってくれないか?」
「リトに!?」
「だめか?」
「駄目じゃねぇけど…お前王様かなんかか」
「うん。そうだよ」
「まぁそうだよな…は?」
リトとヘケトは思ったより中が良好らしく、リト側が理由が何かは分からないがロイを王の後継者としていたらしい。
※ ※ ※ ※
「はぁー。色々ありすぎて疲れた。学校もあるのにゲームにこんなにも体力が吸われるとはな。ゲームやってて疲れるわけじゃないけど」
遠くを眺めているミカゲ、そこに一人の女性が尋ねる。
「すまない、あなたがここの店主だろうか?」
「ここっていうのは裁縫店? それともミカゲ薬店のことでしょうか?」
いつにもましてまんまである。
「ポーションが欲しい上級のだ。資金はいくらでもいい」
「上級のってなると1つ400ギルですけど」
「そうか。ならそれを頼む。早急に一万個」
「わかりましたじゃぁ…は?」
一難去ってまた一難と言ったところだろうか。次はどんな未知が待っているのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます