18話 虚像

「君に頼みたい仕事はね…」


 その瞬間男はミカゲの腹を思い切り殴った。そして画面は暗くなりとあるタッチパネルがミカゲの前に出てきた。


『この後特殊ストーリーが開始されます、途中で辞めることは可能ですが一度やめてしまうと二度とこのストーリーを見ることは出来ません。ストーリーに進みますか?』


 たとえこの後何が起きようとミカゲは続きが気になって仕方ないのだろう。

 この先何が起きるかもわからないのに子供のような好奇心に駆られ、速攻でYESを押した。


 その後画面が明るくなった。

 といってもミカゲのいる場所自体が暗いからなのかそれほどの光は入ってこなかった。

 暗い場所にミカゲがいるのは可笑しなことじゃないが、そこはまるで牢獄のようで、鉄の柵が地面から天井までありその向こう側には見覚えのある顔…いや、ゲームをプレイしている影佑えいすけからしたら脳にしっかり焼き付いた謎の人物といったところだ。

 ミカゲが起きたのに気付いたのか、牢の前に置かれた椅子から離れてこちらに近づいてくる。


「やぁ! 起きたみたいだね」

「…」

「どうしたの? そんな怖い顔して」

「なんなんだお前! なんのために俺をここに連れてきた」

「…やっぱり、気づかなかったね」

「? なんのことだ」

「何だっけ、君。僕、君のこと手練れとか言ってたっけなー…。手練れ、手練れねー……、嘘にもほどがあるな」

「嘘っ! 俺は嘘なんかついてない!」

「あーあー今更言い訳とかいいから。君のことも知れたみたいだしもう教えてもいいかな…、知ったところで君はすぐに死ぬことになるから意味ないんだけど…僕ね、とんでもない嘘つきなんだ。君がさっき聞いた情報もすべて僕が作った出まかせ、僕はある人を探しているんだ、僕にとってなくてはいけない人、その人を探すためにグロッソでいろいろと話聞いてたんだけど君の見た目があの人そっくりでつい話しかけたんだけどねー…期待外れにもほどがある」

「つまりお前今まで俺をだましてて、人違いで都合が悪くなったから処分するってわけか。今までずっと騙されてたのか…まぁ偽った俺も罪深いやつだな」

「まっ、とりあえず君には死んでもらうから、じゃ」


 男は牢を開け鞘から剣を抜いた。

『ずっと騙されていたのか』と言ってはいるが一番の噓つきはこの男だろうな。



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