暗殺者『アサシン』

12話 新たな世界

 学校帰り、2人の高校生が話していた。


「ユニークダンジョンっていうのはランダムに出現する特殊なダンジョンのこと。誰か一人でもクリアすれば同じユニークダンジョンはもう現れない。死にゲーって言われているもののクリア出来ないわけじゃないし、謎解きとか制限時間生き延びろとか…、まぁ得意な奴からしたらヌルゲーだったりするらしい」


 影佑えいすけは昨日あったことを京花きょうかに説明し、色々と教えてもらっていた。


「それにしても、自分と同じ見た目のNPCが目の前で殺された…」

「何だったんだろう、あれ」

「なぁ影佑、それってほんとにNPCか?」

「プレイヤーじゃなかったと思うけど…それがなにか?」

「…もしかして、やられたとき赤い粒が散ってなかったか?」

「そうだけど?」

「ならそいつはNPCじゃない、敵だな」

「えっ、嘘っ」

「プレイヤーがテレポート、又は倒されるときは青い粒が散る。けどNPCは緑、敵は赤だ。まぁ、だとしてもそれがなんだって話なんだけどな」

「……」

「どうした?」

「なんか腹減らね?」

「お前俺の話聞いてないだろ、まぁ良いけどさ…あっ、ラーメン行こうぜ」


 影佑…ミカゲは知らないだろう、自分がとても重要なことに関わってしまったことを。


「一玉お代わりお願いします」


 ……例え重要なことだと知っても気にしたりはなさそうだ。


 その日の夜。grandworld《グランワールド》の世界、椿裁縫店にて。


「聞いて驚くが良い諸君!」

「2010ギルになります、ありがとうございました」


 椿の高く可愛らしい声が店内に響く。


「俺はついさっき盗賊シーフ職業ジョブLvが15に上がり上位職暗殺者アサシンへの昇格が可能になりました」

「良かったじゃん」

「そこで一つお願いがあるのですが……、どうか、昇格の石を…下さい」

「は? 嫌」

「ケチッ! 一つぐらいいーじゃん! どうせもう使わないんだろ!」

「アレは高値で売れるんだよ」

「じゃぁ俺に売れよ!」

「お前なんかより何も知らないド初心者に売ったほうが儲かるんだよ」

「このクズが…」


 昇格石は職業を上位職へと上げるために必要なアイテムだ。

 このゲームの鬼畜と言われているのがその一つで、グロッソの次に行くのがおすすめとされている国、リト。昇格石はこのリト王国で手に入れることができる。だが上位職にもなっていない状態ではそのへんにいる雑魚にさえやられる可能性がある。


「いーじゃん一個ぐらい!」

「嫌だー!」


 2人がしょうもない言い合いをしてる間椿はアイテムボックスから昇格石を取り出し持っているその手をミカゲに向けた。


「これどうぞ。私はどちらの職業も生産職でこれは必要ないので」


 優しい椿の声のおかげで落ち着いたミカゲ。

 無事暗殺者のスタートラインに立ちリトに向かうことになった。



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