9話 ダンジョン

 平日の夜8時頃。

 ベッドの上で仰向けになって寝ていた。勿論頭にはVR機器が取り付けられていた。


「こんぐらいで良いのか?」

「うん。最初のうちはあまり売れないから限界まで安くして数もできるだけ少なくする、大勢は来ないかもだけど固定客は出来ると思います」

「え、その道の人ですか?」


 今日はミカゲの職人デビューの日。椿裁縫店は店の中で作業するため表は使っておらず、回復薬は店の前で販売することになった。ミカゲの店の名前も一応あるが正式にはミカゲの店は無く、椿の店の片隅を貸してもらってるだけだ。


「じゃぁあと一時間ぐらい暇つぶししてもらってても構いませんよ」

「店番は? 盗られたりしない?」

「大丈夫です。一度手に入れたものは契約や受け渡しなどをしないと取られたりはしません」


 椿はいわゆる生産厨と呼ばれる分類である。戦闘は全くせず、生産職だけで稼ぎまくるプレイヤーだ。その一部はスミスと呼ばれていたりする。


「分かった。なら遠慮なくゆっくりさせてもらうよ。何かあったらすぐ呼んで」

「わかりました」


 ミカゲは街を出て薬草や虫の触角を採った場所にまた来た。

 目的はまた何かを採取しに来たわけではなく、今日は別の目的でここに戻ってきた。

 そこには石で出来た祠のような建物があった。ミカゲは大きな両開きの扉を開け中に足を踏み込んだ。

 扉は開いたままでよくある中に入ったら勝手に閉まる、なんてことはなかった。

 ここは前に薬草などを採取しに来たときに見つけたものだ。その後調べると、ミカゲが見たのはダンジョンと呼ばれるものでそこにしか現れないモンスターなどもいる。

 ミカゲは下への階段を降りていった。その時の顔は、まるで恐怖と好奇心が混ざった様な表情をしていた。

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