3話 最弱vs最弱

 プルルルル プルルルル


 土曜の午後1時半頃、スマホが鳴っている。おそらく京花きょうかだろう、そう思い影佑えいすけは電話に出た。


『ごめん、今日出来なくなったわ』


 それは影佑への謝罪の電話だった。


『茨木のじーちゃんが死ぬ前に前にもう一度孫の顔が見たいとか言い出したらしくて…』

「えっ、もしかして京花のお祖父さん…」

『いや、超ピンピンしてるらしい。歳覚えてないけどじーちゃん会うたび若返ってる気がするし』

「そっ、そうなんだ」

『んじゃっ、そういうことなんで。明日の夕方からなら行けるから、Lv《レベル》上げ頑張っとけよー』


 そして京花は通話を切った。


「自分から誘っておいて何してんだアイツ…まぁ仕方がないか…」


 呆れたようなため息を付き、影佑は少しにやけた。


 友達って案外いいもんだな。

「よし! Lvめっちゃ上げて今日俺を放っておいた事後悔させてやる!」


 そう意気込んだ影佑は、機器を頭に取り付け寝転んだ。


  ※ ※ ※ ※


 昨日は最初の職業ジョブを決めるだけで終わっていた。

 職業を決めた後に出た街の真ん中で、青い粒子群が形をなしていき影佑の姿が見えた。

 現実のように銀髪は長く後ろで結ばれていて、背も何ら変わりない。強いて言えば、顔が少し美しくなったところだろうか。現実では、美形であろうと目つきは怖いしよく人を見ていると睨んでいると勘違いされて怯えられることもある。この姿ならときめく女子も少なくないだろう。

 そんな顔面偏差値がちょこっとアップした影佑がはじめに目指したのは、一番最初の街を出てすぐにある草原だった。


「なにこれ…、景色めちゃくちゃいいじゃん」


 そこには何か特別なものがあるわけではない。風によって草が靡き、木の枝葉が揺れ、水の波紋が起こる、ただそれだけでずっと見ていられる、影佑は思った。


「モンスターも可愛いし…、なんかもう戦いとかどうでも良くなってきた」


 と言いつつも腰にある剣の柄を握りモンスターに近づいていった。

 戦い方は昨日の設定が終わった後チュートリアルをしっかりしている為大丈夫だろう。

 影佑の職業である盗賊シーフは、基本的に素早さで敵を揺動、撹乱させ少しずつダメージを与えていく。攻撃力は剣士や戦士、騎士、拳闘士、物理攻撃を得意とする他の職業に比べて高くは無いが、持ち前の速さでそこは補うことが出来るため、威力に関しては安定している。

 スキルに関しても、モンスターの素材や装備、HPを奪うといったトリッキーなスキルを持っているため、テクニシャンな一面もある。

 盗賊の最初の武器は短剣で、近接武器の中で一番軽い。

 盗賊の説明はここまでにして影佑デビュー戦を見ていこう。

 短剣を鞘から引き抜き、最弱のモンスター、ブルージェムに刃を向けた。(ブルージェムは名前は違うけどスライムと変わらない)

 ぷるんっとした見た目のブルージェム。目などの体のパーツは無いが影佑の目の前で一度停まり、後ろに跳ねて逃げていった。


「かっ…可愛い」

 遅すぎてすぐ追いつけるけど、そこがまた可愛い。


 しばらく、逃げるブルージェムを眺めていると…、仲間の元へ行き別のブルージェム達がどんどん集まっていき、大きなブルージェムになった。


「えっ…、まじで」


 それは影佑の方へと近づいてきた。


「でかっ。スゲェでけぇ。もしかして強くなってるとかないですよね…」


 ブルージェムはさっきのように跳ねることはせずのっそりとした動きで向かってくる。

 大きくなったブルージェムは影佑を覆うような攻撃を仕掛けてきた。が、動きが鈍くその隙きに素早く短剣で切りつけられ、呆気なくやられてしまった。


「なんか…、手応えがないな」


 ブルージェムは例えくっついてもステータスは変わらず、ただ大きくなるだけだ。なんならくっつかない方が強いまである。

 無事に初戦を白星で収めた影佑、正直今のを戦ったと言って良いのかわからないが勝利したことに変わりはない、まずは第一歩といったところか。

 その後影佑はステータス画面を開いた。


「経験値少な!?」


 大丈夫なのだろうか。




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