第217話 小佐々城戦略会議②
九月三日 亥の三つ刻(22:00) 小佐々城 小佐々純正
戦略会議室のメンバーはここに詰めており、食事や入浴などを交替で行いながら状況の分析を行っていた。
『発 妙見信号所 宛 前線各所ならびに総軍司令部 メ ヒタゼウ コウフク ダイサングン シヨゼウ キウゴウシ ツノムレゼウニムカウ フツカ ウマヒトツトキ(11:00) メ 二日 申の一つ刻(15:00)』
日田城降伏は昨日二日の亥の一つ刻(21:00)に知った。
豊後侵攻軍の朗報は正直嬉しかった。兵を損なう事なく日田城を攻略できたのだ。戦わずして勝つ。しかし、その喜びもつかの間、豊前松山城陥落の知らせが一刻(2時間)後に届いた。早すぎる。早すぎるぞ道雪。これはもう、さすがとしかいいようがない。
二日の未明に夜襲にて攻略したようだ。
『発 笠木山信号所 宛 前線各所ならびに総軍司令部 ヒメ モジゼウ カンラク フツカトリヒトツドキ(17:00) ヒメ 三日 寅一つ刻(03:00)』
今日になって門司城陥落の報が巳の三つ刻(10:00)に届き、あまりの速さに驚きを隠せないでいると、
『発益富信号所 宛 前線各所ならびに総軍司令部 ヒメ イチグン ニグン タイセフ センシ ミツカ ミノミツトキ(10:00) ヒメ 申一つ刻(15:00)』
亥の二つ刻(21:30)に立花殿と高橋殿の戦死報告が届いた。
あの二人が死んだ?一体何があったのだ?いずれにしても副将二人は若い。現場は大混乱になっていないだろうか?いや、まだ一軍三席の原田殿がいる。うまく二人をまとめてくれるだろうか。
『発 笠木山信号所 宛 前線各所ならびに総軍司令部 ヒメ コクラゼウ テツタイ ミツカタツフタツドキ(AM7:30) ヒメ 三日 申一つ刻(15:00)』
そうして香春岳城城の状況を考えていると、小倉城の撤退報告が届いた。
三日で三つの城を落としたのか。もはや鬼神としか思えぬ。どうやったらそんな事ができるのだ?しかも撤退?では杉殿は花尾城へ逃げたか。これは香春岳城を早くなんとかせんといかん。
豊前の戦況を分析していると、
『発 勝尾信号所 宛 前線各所ならびに総軍司令部 メ シモタカハシ ミハラゼウ カンラク サルヒトツトキ(15:00) メ 酉二つ刻(17:30)』
ようし、筑後の制圧は上手くいっているようだ。日田城降伏の後は角牟礼城、日出生城へ向かっているはずだから、第三軍と第四軍は特に指示を出さなくても良いであろう。いや、第四軍には久留米城制圧後に、どうするか。
ああ、眠い。ここ数日あまり眠れていない。そりゃそうだ。天下分け目の戦いの最中だもんな。交替で睡眠を取っているとはいえ、みんなも眠いはずだ。
コーヒー飲みたい!コーヒーないの?南蛮人!?ポルトガル人!そう言えばコーヒーってどこ原産?ブラジル?いや、エチオピア?アフリカかな、最初?アラビカ種。アラビア?ああ、なんか十字軍時代にイスラムの戦士が飲んで、興奮させるのなんのって、なにかの文献でよんだ?事がある様な。あああ、どっちにしても今どこにも存在してないなら、まだヨーロッパには伝わっていない?じゃあ小佐々大海軍で大航海時代してインドアラビアアフリカまでいってコーヒー探すか!
いやいやいや!眠いが今そんな場合じゃない。
『発 総軍司令部 宛 第四軍司令部 ヒメ タイセウノシヲイタム ダイヨングンハ クルメジヨウセイアツゴ ブンゴ ヒタジヨウケイユニテ ブゼン シンカウシ ナガイジヨウ キイダニジヨウ ホカ ブゼンシヨジヨウヲ カウリヤクセヨ ミツカ ネノヒトツトキ(23:00) ヒメ』
よし、これで大友軍を分断できる。気になるのは豊前だ。この勢いだと筑前に侵入してわれらの領内を荒らしかねん。第一軍と第二軍はどうするか・・・。最終的には現場の判断になるとは思うが、大前提の戦略をもう一度伝えておこう。
第四軍には日田から豊前に侵攻させて国人衆を調略しつつ、第一第二を援護する様に伝えた。第一第二と第四がしっかり噛み合う様にして、仮に道雪が筑前侵攻しても、第一軍をもどらせて、第二軍はそのまま香春岳城を牽制、時間を稼いで調略で他の豊前の国人衆を落としていこう。
北肥後の阿蘇からは服属の願いがでておる。すでに返書を送っているから、隈部の後背をつく事ができるであろう。北肥後の国人衆も一枚岩ではないであろうから、離反者がでたら糾合して阿蘇と連合で内村城から豊後の南山城へ攻め込ませよう。
第三~第五軍に敵の殲滅より服属もふくめ豊後への侵攻を早める様に伝えてある。
それから、種子島、禰寝、伊地知、肝付、伊東と結ぼう。大友の臼杵城を攻めるには海軍が必要だからな。途中の補給港があった方が都合がいい。それに南回り航路の確立のためにはどうしても必要だし、島津の包囲には必要だ。
早めに手を打っておこう。
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