第218話 赤星統家の服属

九月四日 丑の二つ刻(01:30) 小佐々城 小佐々純正


北肥後、菊池城の赤星統家が服属を申し出てきた。


「よし!一角が崩れた!」

思わず口に出ていたようだ。戦略会議室のメンバーが俺の方を向く。


「との、どうされました?」

直茂が聞いてくる。


「ふふふ、北肥後の赤星がわれらに服属すると申し出てきた。通商のたびに大友の不義と、われらの正義を吹聴し続けた甲斐があったと言うもの。赤星が服属するとなれば、その盟友である合志も同じく服属するであろう」。


「そうなれば※隈部の北肥後連合など瓦解しているも同然。無人の野を行くが如く豊後へ進めようぞ。押さえは南筑後の国衆のみでよかろう。隈部らが筒ヶ岳城に到着したら降伏か死を選ばせよ。そして降伏するならば、隈部のみ残して他は糾合し豊後へ進ませる。どうだ?」


俺は興奮を抑えきれない。心配なのは豊前だけだ。


「まずは重畳にございます。しからばそれを各軍、そして赤星と阿蘇にも送りましょう。平文でよろしいかと」。

直茂も嬉しそうだ。にこにこしながら返事をする。


「よし!それでは早速文書作成にかかる」。

これ、結構難しいというか面倒なんだよな。用件を短く的確に書かないといけないから、かなりストレス。前世から『話長い!』とか『で、結局は?』なんて言われていたから、要約するのは苦手なのだ。


しかし、こればかりは任せるわけにはいかない。原文を書いて推敲してもらおう。


まずは第五軍宛だ。

『発 総軍司令部 宛 第五軍司令部 メ アカボシ アソ フクゾクス クマベ キタルトキ カウスレバ メツシ フクスレバ トドマラセ グンシレイハ ミヨウダイトシテ ゼングンヲ ヒキヰテ ブンゴニ シンカウ セヨ メ』


第五軍と小代、内古閑、赤星、阿蘇、他隈部のぞく北肥後連合にて豊後に進ませる。内牧城あたりが良いだろうが、そのあたりは現場に任せよう。


『発 総軍司令部 宛 赤星統家殿 メ フクゾクノマウシデ カンゲイイタス アソドノモ フクゾクサレタユヱ ワガダイゴグンキカトナリ チカラヲアワセ ブンゴニ シンカウ サレタシ キヨウリヨク オネガイ イタス メ』


『発 総軍司令部 宛 阿蘇惟将殿 メ フクゾクノマウシデ カンゲイイタス アカボシドノモ フクゾクサレタユヱ アソドノニオカレテハ ワガダイゴグンキカトナリ ブンゴニ シンカウサレタシ キヨウリヨク オネガイ イタス メ』


これでいいだろう。赤星殿にも阿蘇殿にもという形で決して強制はしない。しかし、応じるだろう。応じなければ服属したとは言えぬからな。しかしこれで、南肥後の相良は別だが、ほぼ肥後の鉱山資源を自由にする事ができるようになる。


相良は今回の戦はもちろん、しばらく放置でいいだろう。ただし、貴久の死で伊東や肝付が鼻息が荒くなっているから、乗せられて攻め込むような事がないように、もう一度釘をさしておかなければならぬな。


ああ、眠い。コーヒーのみたい。




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