第46話 大串の隠し金山

 小佐々氏の大串金山は、大村領との国境ギリギリのところで採掘している。だから隠し金山なんだろう。海上交通税、金山、馬の放牧は小佐々の経済の屋台骨だ。


 親父は何で知っている? と目を回したが、すぐに、あーなるほどね、という顔をした。そりゃ同じ転生人ですから。(笑)前世の記憶と知識はあらん限り活用させてもらいます。


 大串金山は江戸時代の初期、寛永年間の1627年から1630年の4年間しか採掘されなかった。運上金(税金)は採掘高の14%程度だったようだ。


 その運上金は4年間だけで、金が約30kgで1億4,900万円! 銀が約262kgで1700万円! 逆算すると金が4年間に214kgで10億6,200万、銀が1,874kgで1億2,140万。

 

 年間3~4億あったはずだ。ただ、森林伐採や農民が農作業を怠る、という理由で大村藩は積極的に採掘しなかった。


 まあ、そりゃそうか。


 年間で、うちがもともと海上権益のみ(石高は微々たるもの。四公六民で3,200万。そこから諸々引くから。足しても1億前後)だったのに対して、小佐々本体は全体で5~6億はあるのだろう。


 だからだ。小佐々様が何も言わないのも、妙に納得した。


 多少石けんや塩を売って儲けたところで母体を上回るはずもない。いちいち介入して反感を買い、戦時の兵力を減らすのは愚の骨頂だと考えたんだろう。


 しかし、塩の増産や捕鯨の安定化で、俺たちの方が裕福になったらどうだろうか? 現実にその日は近い。なんといっても鯨は大きい。


 そうなった時、石炭採掘のための金山の鉱夫や技術者の提供を、快く受け入れてくれるだろうか? いや、それよりも妬み嫉みが生まれないだろうか? 


 タダでさえ俺は若輩者だ。内心面白く思ってない人もいるかもしれない。


 身内(厳密には身内じゃないけど)のトラブルほどみっともなく、収拾がつかない物はない。ただし、だからといって、領内の発展政策を止めるわけにはいかない。


 これはちょっと、イケイケドンドン(今使うのかな?)だけじゃまずいかもな。社内政治? 根回ししないと。ていうか一番苦手な事。やってきてない事、やりたくない事。


 さて、どうしよう。


 ……いいかっ!


 面倒くさいのは全部親父に丸投げしよう。だって年の功っていうじゃん。(←親父が聞いたら、お前50+1だろ! って言われそう。そう言う親父は70~80くらいか?)


 準備しつつ、臨機応変に対応しよう。

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