第24話 性欲と純愛の狭間で……①
田垣さんとはLINEのIDを交換したあと、分かれることになった。
彼女も気を使ってくれたといった感じのようだった。
だが、俺はさっきのことで確信した。
俺はチラリと北条さんの方を見る………。
それは———————。
———おっぱいが程よく大きくて良き!
ああ………。こんな風に俺が考えていることを北条さんに知られたらきっと幻滅されるだろうな……。
『うわ。気持ち悪いですよ……。私のこと、そう言う目で見ていたんですか? どの男も結局同じなんですね……。女のことを性的な対象としてしか見られないなんて残念な限りですよ』
ううっ……。ぐっさりと胸に大きな穴を開けられそうな刺し方をされそうだ。
とはいえ、以前に一度、エッチな雰囲気になって彼女の胸を触った………いや、がっつりと揉んだことがある。
あのときが彼女が「いいよ」と言ってくれたから、それ以上は何もしないということで、そういう行為をしたけれど……。
あれは双方で恥ずかしさがあった。
そりゃそうだろう?
俺はそもそも彼女がいたことがない。真の童貞なんだぞ……?
高校生ならば、そのくらい当然だと思う。
しかし、彼女すらいなかったという部分で言うと、本当に女の子に対して、どう接すればいいのか分からなかった。
そんな中でのあの行為—————。
絶対的にいけないことをしている自分とその行為に対して、無反応を装う彼女。
そのことが自分の中で興奮してしまっていた。
が、それ以降は何もない。
むしろキスもそんなにしていない、と言っても過言ではない。
それが京都に帰省してからどうだろう。
俺と彼女のために実家の離れを使わせてくれることになったが、俺らは何もないという体で過ごしていたはずなのに、気づいた時には、彼女が俺の腕を抱きしめていた。
柔らかな双丘で俺の腕をサンドイッチされているのは、男なら誰しも興奮しないわけないだろう。
それが付き合っている恋人なら? これで興奮しないのは、EDなのではないだろうか。
正直、ここ二日、同じ姿勢で寝ていることが多く、俺の欲望とともに興奮した血液が下半身に激流を起こしているのは、自分の中では覆い隠せない事実となっていた。
つまり、気持ちの中では、彼女と大切な初めてを—————と考えるようになっていた。
そんな折に、北野天満宮で同級生だった田垣さんに出会った。
田垣さんは学級委員をしていて、クラスメイトからは「委員長」と呼ばれていることが多かったが、どうしても俺はそういう言い方ができず、名字で呼ぶことにしていた。
そして、俺が学内で周囲の男子から疎遠にされているのを気づき、目線のないところで俺に声を掛けてくれたりサポートをしてくれていた優しい人だ。
ある日、俺が教室に戻ろうとしたとき、教室で女子クラスメイトから俺のことを問われている彼女の姿があった。
「どうして、安奈は藤原のことを目にかけてんのさ」
「そうだよ~。藤原くんに優しくしていると、他の男子たちから目をつけられちゃうよ~?」
「あはは……。何だい、それは!」
田垣さんはカラカラと笑い飛ばした。
クラスメイトの二人は不安な表情をしつつ、
「いや、それが本当にヤバイんだって……。足利とかが本気で藤原くんのことを本気でハブろうとしているみたいだし」
「それはさすがにまずいじゃないか!」
「でしょ? だから、触れない方が………」
「むしろ逆だよ。ここだけの話だけれど、結月くんは卒業をしたら、京都から出るという話を先生から聞いていてね。それならば、嫌な思い出で終わるよりも、いい思い出を作ったうえで旅立って欲しいと思うんだよね。そりゃ、足利くんたちは酷いことをしてくるかもしれないけれど、結月くんには残り少ない日々をただ恐れながら、暮らしていくのではなく、少しでも楽しく過ごして欲しいじゃないか!」
「安奈……。あんた、どうしてそこまで藤原のことを大事にできるの?」
「もしかして、安奈は藤原くんのことを?」
「ん? 何だい? 私は藤原くんと3年間中学校で一緒のクラスをしてきたんだぞ。彼のこともよく見ているから、今、表に出てきている噂が嘘なのは承知しているよ。だから、私は彼のことを信用しているんだよ」
田垣さんは腕を組んで、うんうん! と頷きながらそう言い切った。
「それって恋か何か?」
「恋? うーん、どうだろうなぁ~。私は、男の子たちをそう言う風に見たことがなかったから、よく分からないよ!」
「本当にそういうところ鈍いんだから~」
「え? そうかい? でも、女の子は大好物だよ? 今日も良き胸をしてるね!」
そう言うと、田垣さんはおっとりとしたクラスメイトの胸を指で突っつく。
「ちょ、ちょっと!? 安奈!?」
「あはは! これ以上はやらないよ! さすがにセクハラで訴えられたら、成績に響くからね!」
そう言いながら、女子生徒からの非難を笑い飛ばしていた。
うん。あの時から変わっていないなぁ………田垣さん。
俺はその言葉を聞いて以来、高校に入ったら、田垣さんのように誰構わず助けになれるような人間になろう、と思うようになった。
そして、そのような生活をしていて、ついに自分の好きと言える女の子に出会った。
それが北条翼さんだ————。
最初は偽りの契約の中の彼女だったが、どんどん距離が縮まり、今は本物の恋人同士となった。
そこからも母さんの陰謀などによって、北条さんは俺との肉体的な距離も縮めつつあるような気がする。
とはいえ、突然の手出しは当然ご法度だろう。
だからこそ、きちんと段階を踏んで———————。
「結月?」
「え? ん?」
俺は思わず気のない返事をしてしまう。
北条さんは俺の顔を不安そうに覗き込む。
「もしかして、疲れてる? 今日も暑いから……。ちゃんと水分補給はできてる?」
「え? あ、うん。ごめん、ボーっとしてた」
「うん。そうだね。ちょっと心配しちゃったよ。あ、でも、ほら、もうすぐ金閣に着くよ」
「ごめん! 俺、何もエスコートできてなくて!」
「大丈夫だよ。さっきの田垣さんだっけ? 同級生の人とあったから、もしかしたら、あの頃のことを思い出していたんじゃないかって……」
「うん。その通り……」
「嫌なことを思い出しちゃったの?」
「いや、逆かな……。田垣さんには、サポートしてもらえて……。今の俺が高校生活できているのは、彼女のおかげかも……」
「なるほどね~。もしかして、元カノ?」
「ねえ、それは俺が中学時代に……というか今まで彼女がいないことを知ってて言ってるでしょ?」
「あはは……。意地悪なこと言って、ごめんね!」
「本当に意地悪だよ。俺にとっての初めての彼女は翼だし、ずっと大事にしたいと思っているんだから」
「——————!?」
俺の一言に北条さんは頬を真っ赤にしつつ、固まってしまう。
そして、彼女はその硬直が解けると、俺の脇腹を小さく小突いて、
「そういうこと急に言わないの……。私だって、結月のことが好きなんだから、そうありたいと思ってるんだからね……。で、でも、恥ずかしいから言ってないだけ」
「うん。知ってる」
何だかやり返しちゃったような気がする。
北条さんは頬をリスのようにぷぅっと膨らませると、俺の腕をギュッと抱きしめてくる。
ぬおっ!?
だから、それはまずいって——————。
「意地悪をする結月には、私からも意地悪をしちゃいます!」
いや、これは意地悪というよりは幸せなんだが……。
ああ、ダメだって、血流が—————————っ!?!?!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます