量り売り

私をここから出してください

夕方に覆い被さり

赤色を吸い出して遠ざかっていく

しずかな雨になりたかったのに

鉢合わせて燃えたのは

指先の小さなささくれと

外国製のお菓子の

包み紙だけだった

印字された

意味のわからない言葉を

手のひらでくちゃくちゃにして

時間の感覚を

指先で割いている

熟したささくれを

逆立てる声を集めては

ぷつりぷつり 鋏で切る

歯止めが効かず

目の横から口の端から

私は少しずつ千切られて

袋に詰められ 秤に掛けられ

それ相応の

値段が書かれたシールが貼られる

だからあなたたちのせいだ

この顔のアンバランスは

全部あなたたちのせいだ

唇のシワが

やけに凹んでいるように思える

テレビから流れる

歌がなめらかだったから

しずかな湯船の中で

体のもぎれた部分を洗い

規則正しい波紋で消毒する

痛いところが

そのまま輪郭線になる

私には存在するはずのなかった

たくさんの輪郭線が

体に撃ち込まれていて

こんな方法で

ひとりの人間だなんて

呼ばれたくなかったの


言葉の奥の

一番重くて硬い部分が食い込んで

全身もう真っ赤だ

口から垂れる言葉が

これからずっと

赤いのはつらいから

私をここから出してください

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