ハンドクリーム

画数の多い気持ちが増えていって

皮膚を突き破れずにじれったいから

指の切れ目が痒かった

出ていくことができないと

住所を忘れていくらしいよ

足跡が風に巻き上げられたりして

向かうことも戻ることも

変わらなくなっていくのに

皮膚の下を

何度も行き来している


熱を持つ場所の偏りを

映す場所として

公園の砂場は乳白色にかがやく

子どもはいつだって

均等な笑い声を出せないから

どこかが必ず暗くなり

その暗くなったところで

くらいきもち、という概念が

今日も次々に踏み潰されていった

簡単になめらかになるから

何度もハンドクリームを塗って

おしゃべりをやめた平らな地形は

今どこにいるのだろう


いつも内側の

誰も知らないところで

いちばん最初に傷つく人になりたい

自分の響かせ方ばかり考えている

心細さをすべて暴かれて

思考の傾きに

気がついていないフリをしている

崩れそうな風合いの未明に

かゆみのふてぶてしさを

布団の外に広げて出して

公園を覆っていた夜が

もうこんなに静かなことに

早く気付いて欲しかった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る