標識を後ろから抱きしめて

「やさしくしてください」と言ってみる

思い出があまり凶暴にならないように

目を瞑った時に現れる長い廊下を

定期的に巡回している

檻に入れておくよりかは

放牧した方がいいと聞いて

私のたくさんの部分を

思い出たちが踏み躙る

小さいころに植え付けられた正しさが

ずっとそのまま育てばいいね

言葉の

殻の部分でお昼寝をする

悪巧みが風船のように膨らんで

息はきゅうくつ

せっかく抜け出したのに

正しいことは道にならない

生乾きのまま

行ったり来たりを繰り返す

もう何年も

アスファルトは冷たいまま

どこにも行きたくないという言葉が悪用されて

道路で渋滞が起きる

タイヤがなかなか動かず

硬い種子は潰されて

狭い道路の隙間から

標識が生えてくる

生まれてこのかた

誰ひとり騙したことのないような顔で

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