宛名

箱に詰めるには

少し大きすぎる旅の記録が

日光に丸められて

炭酸の気泡と

ぶつかる ばらける

くらげの外郭のような

弧を描いて走り去る

まるい音 しかくい音

人が作った音に含まれる悪意は

薄いレースのカーテンがふやかす光に慰められる

それを眺めていると

私は

眠気の中にすら

逃げ場がないような気がして

いつか全部の言葉が水たまりになることだけを

信仰していたくなる

身体に隠された終着点を

誰に見せるか迷う

いつかたったひとりに打ち明けて

全部なすりつけよう

通り過ぎる人たちの

仕草をよく見て

私と最も似ている惑星を

体の奥に飼っている人に

声を掛けてみたい

どこから来たんですか

ちなみに私は

紙飛行機を作るときの

最初の山折り出身です

故郷に六角形の風が吹いているのを

いつもより荒れた波の高さで知る

不安定な高低差は

体の中に収められた

軽くて白い骨を伝って

もう宛名を書き出していた

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