潤い

思い出なんて大嫌い

乾燥した関係性が

心臓をペリペリとめくって

裸よりもっと

繊細なものに水を遣る


滲みる音が

逃げていった先を教えて


渇ききった時間は

こんこんと降る海馬の中で

身体を透明に塗り直している

センセーショナルな記憶から

みずみずしさを収穫する時

さかむける心が何かを訴えている

何かを叫んでいる

当然のように

私の指示系統は混乱していて

なんだか記憶の中のみんなと

友達になれるような気がした


どれだけ地面が濡れても

水たまりはいつか消えてしまうのに

私の中から逃げることなく

ずっと循環している

君は何を探している人?

私という形に太陽の楔を落として

たくさんの音を飼い慣らすには

その記憶の潤いは

今日も充分な働きをしていた

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