第2話

解離性同一性障害。それが私につけられた病名だ。二重人格、といった方が分かりやすいだろうか。私の中にはもう一人別の誰かがいる、それが分かったのは一年前ぐらいだっただろうか。多分、“あれ”が原因だったんだろうと思う。あの日から、私の全てが決定的に狂ってしまった。周囲にいた人は、私に壁を作った。実の家族でさえも。気味悪かったのか、誰もが私を遠ざけた。誰もが「私は味方だからね、大丈夫だからね」と気持ち悪い偽善的な笑みを顔に貼り付けて。誰も私を“私”としてみてくれなくなった。一時は誰も信じられなくなった。その中で、私をちゃんと見て、付き合い続けてくれたのが、私の主治医と親友だった。その存在に、何度私は救われただろうか。でも、いつまでも傷ついた心が満たされなかったのもまた事実。私の記憶のない飛び降りも、病気が分かったその頃から始まった。

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