第1話

目を開けると、そこはもう見慣れてしまった部屋だった。本当は、見慣れてしまってはいけないのだろうけど、と私は嘆息する。また、“あの子”がやらかしたらしい。強かに打ったのか身体全体がジンジンと痛んだ。最近はやけに多いな、とぼんやり考えていると外で物音がした。反射的に首をすくめてうずくまる。絶対にお小言があの人から浴びせられるに決まってる。あれなかなか終わんないんだよなぁ、嫌だなぁ、とあれこれ思考を巡らせていると、少々荒い足音と、扉を開く音がした。

「起きた、調子はどう?」

不機嫌なのかぶっきらぼうにまで聞こえるその声音で体調を聞いてきたのは私の主治医だ。最近は私がしょっちゅう運ばれてくるためその度に呼び出しをくらうのがもうそろそろウンザリだと愚痴をこぼしていたと言うことを人づてに聞いた。でも、なんだかんだ言って毎回私を心配してくれるのはこの人だけだろう。ああ、あと私の親友も、だった。そして、私をちゃんと人として見てくれるのも。

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