表裏世界

月影 星葉

プロローグ

「あーあ、またやっちゃったや。」

ここはある廃ビルの屋上。もう誰もいないくせに背だけは高く、繁華街の明かりが闇に宝石をばら撒いたように輝く中、“彼女”は“笑み”を浮かべながら買ってきた炭酸の蓋を開けた。

軽い音を立てて、炭酸が抜けていく。

昔から、炭酸は好きだった。それが抜けていって跡形もなく消えるさまは、“私”の生き様に似ていたような気がしてならない。

まあ、それも、ただ単に“私”が一方的な感傷に浸っているだけかもしれないけど、と自嘲的な笑みを浮かべて、炭酸を飲み干すと、缶を床に投げ捨てた。

「今日こそ、いけるかな。」

そう呟くと、“彼女”は夜の闇へと身体を投げ出した。

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