第35話 7月



 L町のL海岸は広い海岸線を持っているが、その北端は弓形となり山となっている。奈菜架の運転する車が、その北に進み、その山を曲がると、拡い、西Y町の西Y浜海岸が見えた。


 奈菜架は、西Y浜海岸の駐車場に車を停めた。すぐ目の前は西Y浜海岸だった。

 麻衣と奈菜架は、コンクリートの海壁に向かって走った。海壁の階段から浜に降りた。

 目の前に透明な海が拡がる。


「麻衣ちゃん、ここだよ!、あの映画の海は!」

「そうだね、ここだよ!」


 奈菜架はどうしてか嬉しかった。海に向かってはしゃいだ。浜辺には野生の朝顔が咲いていた。


「きれいな海だね、ここ」

「そうだね」

「でも、待ってよ、麻衣ちゃん、麻衣ちゃんはここに来たかった訳じゃないんだよね?」

「うん、そうだよ」麻衣はそう言った。笑顔の表情が消えた。

 


 




 

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