第33話 7月
麻衣がJ高原駅に着くと、奈菜架が車で迎えに来て待ってくれていた。
麻衣は笑顔になり、車に駆け寄った。
「奈菜架ちゃんただいまー!」
「麻衣ちゃん、おかえり」
「奈菜架ちゃん、電車すごく暗くて怖かった、なんかほっとしたよ」
「電車も人がいないからね」
麻衣と奈菜架は別荘に戻った。麻衣はシャワーを浴び、その間に奈菜架が夕食を作った。
夕食は、チーズとハムとアスパラのオイルソースのパスタとサラダ。麻衣は明日東京に帰ることになるので、別荘の食材はどうするのかと思ったが、それはお嬢様の奈菜架には聞いてはいけないと思った。
「おつまみどうする?」
「チーズでいいよ」
「わかった」
夕食の後、麻衣は奈菜架とお喋りをした。話題にと考え、映画「つばさ」をテレビに映し出した。奈菜架は「昭和の人って、みんなパーマあてているんだね」と言った。
麻衣は映画を観ながら、L町のA大橋、時計店、婦人服店、本屋の通りは今も全然変わっていないと話した。奈菜架は「あそこはすごい田舎だからね」と言った。そして映画のあるシーン。主人公つばさが男性と浜辺に座りながら話をし、つばさが海に向かって走り出す。つばさは笑顔で話す。背景には美しい海。このシーンを麻衣はおかしいと言った。
「L町の海って、テトラポッドがあるよね?、でも映画は綺麗な海でテトラポッドがないね、昭和の頃はそうだったのかな?」
「でもわたしが小学生の頃、その頃からテトラポッドはあったよ」
「そうなんだ?」
「そうだよ、わたし小学生の頃、浜からテトラポッドまでよく泳いだから、お父さん不安がって浮き輪持ってついてきたの」
「テトラポッドって、そんな前からあるんだ」
「ずっとじゃないかな、小学生の頃にあったテトラポッドもずいぶん古びていたっておぼえている」
「・・・。」
「ね、これって巻き戻してみてよ、麻衣ちゃん」
麻衣はスマホを操作し、巻き戻した。つばさが男性と浜辺ですわってお喋りしている、つばさは海に向かって走り出す。つばさは笑顔で話す。
「ここって、もしかして違う海ってこと?」麻衣は言った。
「そうかも、二人が座っていた浜はまちがいなくL町だよね」奈菜架は言った。
麻衣は考えた。
「奈菜架ちゃん、明日、もう一度L町に連れて行ってくれる?」麻衣は奈菜架に頼んだ。
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