第30話 7月



 麻衣は、映画「つばさ」を観た。映画は昭和の東京、銀座の街が映し出された。麻衣は女性がみんなパーマをあてていることが興味深かった。銀座はまだ背か高いビルが少なく、古めかしかった。そして、ある女性が海の香りを感じ、L町に心を馳せ、L町が映し出される。ここで映画の主人公、つばさが登場する。つばさの部屋から見える川はたしかに海に臨むF川だった。

 映画の中のつばさが、神社の脇の道を歩いた。ここは今日、麻衣も歩いた場所だった。銀座と違い、L町は昭和の時代となにも変わっていなかった。時間が止まっている、そう麻衣は感じた。そして映画の中のつばさは、斜め四角・白塗りの壁面を持ったA大橋を歩いて行った。

 昭和の銀座、L町が映し出され、麻衣は驚きながら映画を観たが、映画が中盤に進むと主人公たちの物語が中心となり、麻衣は陳腐さを感じ、ワインを飲み進めてしまった。そして麻衣は微睡んだ。


 麻衣はソファで眠ってしまい、真夜中目を覚ました。テレビは映画が終わって真っ暗となっていた。夜のざわめきは大きさを増し、その大きさは蛙と麻衣は感じた。麻衣は怖さをかき消すため、再度、映画「つばさ」を観た。


 





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