第27話 7月
麻衣はそっと、急ぎ足でビデオ店から出た。1Fの入り口はお昼だけはお弁当屋になるらしい。中年の女性が準備をしていた。
麻衣は表に出た後、振り返りビデオ店を見た。目の前は国道だった。麻衣は国道に沿って、来た道を戻った。すると、すぐに先ほど海に行くために西へと曲がった道の向かいに出た。
なんて小さな町。
麻衣は、スマホの時計をを見た。まだ1時間しか時間が経っていない。
麻衣はしばらく宙を眺めた後、スマホでL町の地図を調べた。
麻衣は先ほど海に向かった道を再度歩いた。再度病院の前を通り、今度は海のほうに向かわず、L町小学校の方に左に曲がった。その場所から麻衣はきょろきょろと左右を眺めながら歩いた。その先には比較的築年数の新しい2階建てのワンルームマンションがあった。
麻衣は立ち止まり、マンションの外観をじっと眺めた後、マンションの階段を上り、202号室の前に立った。麻衣は部屋をじっと眺めた後、レバー式のドアのノブに手をかけた。鍵がかかっていた。
202号室の両隣の部屋は人の気配がなかった。一番端の部屋には人が住んでいるのだろう、タイヤが4輪重ねて置いてあった。
麻衣はマンションの反対側に周った。202号室はカーテンもかかっていなく、中の天井が見えた。
時間はまだ11時だった。こんな小さな町にはカフェなんてない。麻衣は思い出したかのように、先ほどの海に行く道に戻り、浜辺へ出る方向の反対側に和食店を見つけた。
麻衣は和食店に入った。魚屋(干物屋)に併設したお店だったため、魚の匂いが多量だった。
昔ながらの魚料理中心の和食店を麻衣は感じた。店の中には昭和の古い写真があちこちにかけられていた。映画の撮影にこの店が使われたようだった。
海の近くなのでお刺身がメインのメニューなのはわかったが、おすすめは干物のようだった。店で一番のおすすめが、お刺身と干物のセットの定食。これだとお腹がいっぱいと麻衣はお刺身の定食を頼んだ。
お刺身の定食は、鯵、鮪、金目鯛、甘海老、しらす、そして麻衣が知らない魚の刺身が2魚、小鉢は玉葱のスライス、桜海老、漬物、昆布、ひじき、筍と、魚も小鉢もたくさんだった。
食事が終わり、コーヒーを飲み、支払いを済ませて麻衣は店の外へ出た。麻衣はゆっくりと食事をし、1時間は過ぎていて、自分がどっちの方向から来たかわからなくなった。麻衣は道を進もうとすると、和食店のすぐ向こうに4階建て・ワンフロア3部屋ほどの小さなホテルを見つけた。それは、和食店の中にあった昭和の写真で見た光景だった。
麻衣は不思議を感じ、歩いた。神社があった。ここも和食店の中にあった昭和の写真で見た光景だった。この神社の脇を映画の主人公の女性が歩いてくる写真だった。麻衣は雰囲気を感じながら歩いた。すると、斜め四角・白塗りの壁面を持った古い小さな橋が目の前に現れた。この古く小さな橋も映画の主人公の女性が歩いた橋だった。
麻衣は橋の名前を見た。橋の名前は、“ A大橋 ”と橋の欄干に書かれていた。
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