第26話 7月



 麻衣は波を、海を感じた。綺麗な海でまだ海開き前だったが浜辺にごみも少なかった。

 浜辺の向こうには、海に向かって建つ大きな建物が見えた。ホテルなのだろう。


 浜辺の端から端まで歩き終えると、コンクリートの海壁の継ぎ目があった。麻衣はその継ぎ目に歩いていくと、道に戻る階段となっていた。麻衣は階段を下りた。


 階段を下りると、すぐホテルの敷地となり、ホテルに入れるようになっていた。ホテルの名前はL荘という名前だった。


 L荘の敷地を出て道路に戻る。道路に戻った後、麻衣はどうすればいいか悩んだ。国道の方向へ戻ることにした。L荘の周辺は民宿が集まっていることがわかった。あと二週間もすれば海開きの時期になる。

 麻衣は国道に戻った。Z海バスのバス乗り場があった。


 ここがZ海バス?


 目の前にコンビニ、道の向こうは銀行と郵便局。北の方向には農協。

 麻衣は動きを止めしっかりとその周囲を目に焼き付け、横断歩道を渡った。1Fにコンビニが入っているビルの2Fのレンタルビデオ店を訪れた。



 麻衣が階段を上るとレンタルビデオ店があった。中規模のお店で、レンタルビデオ店の中に本屋があった。30代の女性店員がひとりいただけで、土曜日なのにお客はまったくいなかった。女性店員は麻衣の存在に気づいたが挨拶もしなかった。声をかけない方が礼儀なのだろう。

 麻衣は動かずに店を見渡し、ゆっくりと棚に置かれているDVDを眺めた。そして映画を探しているふりをしながら、店の中を見回した。

 麻衣はビデオコーナーをを歩いた後、本屋コーナーも歩いた。雑誌の棚、漫画の棚、旅行雑誌の棚、教科書の棚、児童書の棚。ひと通り見て回ると、再度、ビデオコーナーに戻った。その間15分は過ぎたであろうか、お客は誰一人やって来なかった。

 ビデオコーナーには女性の文字でポップが書かれ、おすすめ映画とドラマが紹介されていた。

 

 このL町がロケ地になった昭和の映画「つばさ」。

 10年ほど前は大人気だったテレビドラマ「愛を叫んで」。


 


 



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