第24話 7月



 朝、麻衣はいつもよりも早く目を覚ました。

 ナイトウェアを着替え、バスルームで化粧をした。


 化粧の後、麻衣は別荘の庭に出た。目の前には朝の海。朝の海は優しかった。

 

 麻衣は奈菜架の別荘の門を出て、近所を散歩した。

 このあたりの別荘はすべて海の方を向いている。海に向かって別荘を建てているのだ。


 道を歩いて行くと海に向かって下りとなった。そのまま下って行くとこの別荘地でも一番立派な西洋建築の別荘にたどり着いた。その別荘の脇には小路があった。麻衣は小路を歩くと波濤が聞こえた。

 小路は崖を伝う急な階段となった。海岸の下は白砂の小さな浜辺だった。なるほど、この小さな浜辺はこの別荘地の住人たちのプライベートビーチなのだ。


 麻衣は奈菜架の別荘に戻った。少し散歩しただけかと思ったが、海を眺めていた時間が長かったのか、一時間は歩いていた。


「おはよ、麻衣ちゃん」


 奈菜架が挨拶した。奈菜架は朝食を作り、珈琲を淹れると言った。麻衣は自分は紅茶を持ってきたので、お湯だけでいいと言った。奈菜架は、それじゃイングリッシュ・ブレックファーストにすると言った。


 麻衣は目前に海が拡がる庭で、椅子に腰掛け、紅茶を飲んだ。

 麻衣はこの後、すぐにL町に行きたいと奈菜架に伝えた。奈菜架は準備をすると言った。



 麻衣は奈菜架の運転する車でL町に向けて出発した。


「麻衣、L町までは一時間くらいかかるよ、向こうについて何をするの?」

「うん、町をちょっと見てみたいんだよね」

「L町を?、あそこ何もないところだよ?」

「うん、ひとりでゆっくり見てみたいの」

「わかった、帰りは6時くらいに迎えに行くね、何にもないところだから退屈して困っても知らないよ」

「わかった、ありがとう奈菜架ちゃん」


 奈菜架の運転する車は、山の峠に入り、山と山を抜け、山と山に囲まれた田畑の道を進んだ。都会生まれの麻衣には見知らぬ光景だった。こんなところに人が住んでいるなんて。


 奈菜架の運転する車は、山と山に囲まれた田畑の道を進み、やがて海が見えた。

 そこはL町だった。







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