第8話 11月
R温泉のR地海岸。
ここの海岸は弓形の海岸となってあり、遠浅の海、透明度も高く、子供が遊ぶのは最も適した海との評判を聞いていた。浜には元豪華客船の救命艇が置いてあり、夏にはそこに湯を入れて、船露天風呂として有名なのだそうだ。11月の海には誰もいない。
あまりに誰もいないので浜辺を歩くと村中から見られている気もしたが、振り返っても人の気配がない。この寂れた漁村の村では村中から見られていたとしてもそんなものかもしれない。
悠理は北の浜辺から南の浜辺へと歩いた。波は穏やかで蒼かった。
南の浜辺へと歩いて15分もかからなかった。そのまま海岸の道へと戻り、道沿い・海沿いに歩いた。少し歩くと村人専用の船着場となってあり、小さな船がたくさん停泊してあった。
道沿い・海沿いを歩き、堤防を越えると弓形の海岸の南端に到着した。そこは山になっていて海から山の上へと上れる小路があった。悠理が歩いてみると、すぐ上は小路が割れていて、地震災害により地割れでの通行止めと書かれた木の立て札があった。
悠理は来た海沿いの道を戻り、帰りの国道への道へと戻ろうとした。移動販売の軽トラックが野菜を売りに村に来ていた。悠里は角の日用品店でコーラーを買って飲んだ。この村には店らしき店はここだけしかなかった。
悠理はコーラーを飲んで、また浜辺を歩いた。また浜辺から来た道、国道への道へと戻る。気づかなかったが海から見ると、国道への道の隣に小さな道が見えた。
L浦歩道。それが小さな道の名前だった。小さな道の入り口には古ぼけているものの厳かなプレートで飾られ、昔からある由緒ある道だということがわかった。悠理が道を眺めると、道の向こうから気まぐれな猫が悠里を見つめ、あくびをした。悠理は笑い、L浦歩道を歩くことにした。
L浦歩道は、国道へ戻る道の横道で、昔は商店であったであろう民家の裏手にあった。そのまま歩くと坂となり田圃と畑に出て、お墓へと続いた。お墓は国道の手前、村の一番の高台にあった。悠里は振り返った。振り返るとR地海岸の海が一望できた。
悠理はそのままL浦歩道を歩いた。国道へ戻る道は国道へ戻って終わりだが、L浦歩道は国道の向こうへと道が続き、そのまま歩くと山に入った。
「海の道だと思っていたのに?」誰もいないのに、悠理は一人話した。
悠理はL浦歩道を歩いた。L浦歩道は山の上へ上へと続いた。悠理は山の上へ上へと歩いた。振り返るとR温泉のR地海岸がすべて望めるほどの山の上へとたどり着いていた。そしてそこで悠理は見た。弓形のR地海岸の南端の山を。それは山ではなく巨大な鬼岩だった。巨大な鬼岩が割れていたのだ。
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