岡﨑弘子SF

 ちょっと愚痴ってもいいですか?


 いやね、ちゃんと転生しましたよ。はい。中世ヨーロッパテイストの田舎の村のミミズクとして生まれ変わりました。


 生まれた時に、7260円のガラスペン持ってたおかげなのか、「伝説のミミズク様じゃ~」みたいなテンション感で迎え入れられて、そこらへんはわりと満足度高かったんですけど、やっぱヒロインポジ気になるじゃないですか。


 ファイ〇ルファ〇タジーⅦのティ〇ァみたいな可愛い幼馴染を期待してたんですよ。


「うわぁ。岡﨑さんじゃん。女神さまに続いて、テンション下がるわぁ」

「違います。ヒロコ・ザキです」

「岡﨑さん、この世界では文房具王になれそうですか?」

「目指してはいます」

「やっぱ、岡﨑さんじゃん」


 幼馴染会ってみたら、岡﨑さんでした。


 で、なんかやんかその始まりの村で楽しく暮らしてたら、急にね、村人たちが「グラシンを本のカバーにしないと死んじゃう病」っていう奇病に罹ってしまって、私的には「フリーサイズのブックカバー」をオススメしたんですけど、絶対グラシンじゃないと死んじゃうって、みんな言うんで、この変な呪いを解いてもらおうと村を代表して私が大きな街の教会に行くことになりました。


 伝説のミミズク様としての初仕事です。テンションあがるわぁ。聖女さま可愛いといいなぁ。そんな淡い期待に胸を膨らませながら、村を出発しました。


 まぁ教会に着いてすぐにそんな淡い期待は砕かれたんですけど。


「聖女様も岡﨑さんじゃん」

「違います。私は、オカヒロです」

「岡﨑さん、フリーサイズのブックカバーとグラシン、どっちが好きですか」

「断然、グラシンです」

「やっぱ、岡﨑さんじゃん」


 聖女様会ってみたら、岡﨑さんでした。


 正直、「グラシンを本のカバーにしないと死んじゃう病」を流行らせたのこの聖女の黒魔術なんじゃないかって疑いましたね。


 最終的に、岡﨑さんと相談して「別に治さなくても、グラシンのカバーをかける仕事を村人全員でして、それで食っていけばいいんじゃないか」って結論に至りました。


 そんな感じでちょっと村に帰っても、『伝説のミミズク様』って送り出してくれたみんなに合わせる顔がないので、フラフラとそのままこの世界を放浪することにしたんです。


 放浪してたら全然「悪徳令嬢」が何かわかってない悪徳令嬢役の岡﨑さんに遭遇したり、世界を救えって言われて魔王に会いに行ったら、これまた魔王の仕事がよくわっていない岡﨑さんが王座に座ってたりしまして、私ようやくわかったんですよ。


 あ、この物語の主人公は自分じゃなくて、岡﨑さんだなって。


 それで、もらったスキルの『フィナンシャルプランナー』を活かして、この世界でスローライフを楽しむことにしました。


(つづく)

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