再会と再会-2


 王都で再会したアヤさんに町を案内してもらうことになった。


 とは言ったものの、現在時刻は14時を過ぎたあたり。


 王都の隅々まで見て回るには時間が足りない。


 仮に時間があったとしても、アヤさんにツアーガイド並みの案内をさせるのも忍びない。


 今日の所は、前回案内してもらえなかったレーネの絶景に代わる、王都の観光名所を紹介してもらうことになった。


 その前に――


「どこか美味しいお店はありますか?」

「あれ? さっき何か食べてましたよね?」

「はい、パイを食べたんですけど、お腹が空いてしまって」

「アラタさんって、意外と食いしん坊ですよね」


 そう言って笑うアヤさん。


 僕を食いしん坊に含めるのなら、昼食を食べたはずなのに、ちょっと前に肉串を平らげた貴女も仲間ですよ?


 アヤさんに案内されて、手頃な店に入る。


 メディアで紹介されてそうな、お洒落な雰囲気のレストランだ。


 店内は明るく、観葉植物が置かれており、外にはオープンテラスの席もある。


 昼過ぎで空いていたテラス席に、アヤさんと一緒に座る。


「アヤさんも、何か食べますか? 奢りますよ?」

「いいんですか? じゃあ、これにします」


 お互いに注文が決まったので、店員を呼んでメニューを告げる。


 程なくして、頼んだ料理が運ばれてきた。


 僕が選んだのはパンケーキ。


 パンケーキと言っても食事系で、黄色い円盤型のケーキの上に、目玉焼きやベーコン、サラダが盛り付けられている。


 対して、アヤさんがが選んだのはパフェ。


 それも、なかなかに大きいパフェ。


 30cmはありそうなパフェグラスにアイスが充填され、そこにベリーをはじめとした数種類のフルーツに、ミントやウエハースが飾られている。


「……それ、食べられるんですか?」

「はい? はい、全然余裕ですけど?」


 人間の神秘だなぁ。


 いわゆる別腹は科学的に証明されており、料理を目にすると胃がスペースを作り出す、という記事か何かを見た覚えがある。


 だとしても、これだけ大きいサイズのパフェは、別腹では済まない気がする。


 それに、食べてる途中で飽きそうだ。


 僕の心配を他所に、アヤさんはハイペースでパフェを攻略していく。


 彼女が食べ始めたのを見計らい、僕も食事を開始する。


 目玉焼きにナイフを入れる。


 衛生的な問題を心配してか、この目玉焼きはしっかりと火を通している。


 どちらかと言えば半熟が好みだが、これはこれで美味しそうだ。


 目玉焼き、ベーコン、パンケーキを一口大にカットして、口へと運ぶ。


 少し、塩味が濃い気がする。


 おそらく、ベーコンの下味で多く塩を塗り込んだんだと思う。


 塩辛さを感じるくらいだけど……悪くない。


 ベーコンの味が濃い分、目玉焼きとパンケーキは薄味。


 それぞれがお互いの味を引き立て合い、卵、肉、小麦の良さが際立っているように思う。


 付け合わせのサラダもみずみずしく、控えめな苦みが次のパンケーキの一口を誘う。


 うん、文句なく美味しい。



「――おい、あれ」

「――ああ、本当だ」


 料理を楽しんでいると、通りが騒がしくなってくる。


 レーネの一件もあり、少し身構えてしまったが、どうやら何か問題が起こったということではなさそうだ。


 むしろ、行き交う人々は足を止め、何かを見ているような?


「アラタさん、見てください! 第二騎士団の凱旋ですよ」

「第二騎士団というと、モンスター討伐専門のですか?」


 王国には幾つかの騎士団が存在する。


 そして、それぞれの騎士団ごとに役目が異なる。


 第一騎士団は近衛。


 王や王族を護るのが役目であり、そのため個々人の能力が高く、国を護る騎士の中でも精鋭ぞろい。


 第二騎士団はモンスター討伐。


 王都をはじめ、王国の町や村を回り、モンスターを狩るため、住民たちからの信頼も厚い。


 第三騎士団は治安維持。


 犯罪者の取り締まりを行う集団で、対人戦闘に優れている。


 他にも魔術隊である第四騎士団や医療部隊である第五騎士団などがあるが、どちらかというと影が薄い。


 それにしても、人々の賑いが凄い。


 まるで、国際大会で優勝したスポーツチームを迎えるような熱気だ。


「凄い歓声ですね」

「元々、第二騎士団は人々からの信頼が厚いんですけれど、先月就任したばかりの第二騎士団長が有名なんです」


 第二騎士団の団長は騎士団を総括する副団長としての役目も併せ持つ。


 そのため、実力の高い第二騎士団の団長が就任する決まりだ。


 確か、アルフレッドって名前のイケメンNPCが副団長だったはずだ。


 そして、騎士団の頂点に立つ団長こそ、レーネの町で会ったテオ・アーサー・ブラウン――テオさんだ。


「第二騎士団の帰還だ‼」 

「ローズ様だ!」


 騎士団について思い返していると、鎧に身を包んだ一団が姿を見せる。


 それにしても、ローズ様?


 この場合、第二騎士団の団長であるアルフレッドの名前が上がるはずではないのだろうか?


 にも拘らず、人々は『ローズ』という人物の名前を呼んでいる。


 あれ?


 騎士たちの凱旋。


 一切の乱れなく行進する彼らの中で、ひとり馬に乗っている人物が目に留まる。


 本来ならアルフレッドが居るであろうその場所には、彼よりも幾分か小柄な人物が騎乗していた。


 そして、歓声を上げる人々に応えるには見覚えがあった。


「――?」

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