再会と再会-1
「動くな」
その言葉と共に、首に感じる違和感。
針のような、細いものが当てられていると分かる。
こちらが何かしらの行動を起こせば、相手は容赦なく喉元に武器を突き刺すだろう。
白昼の大通り。
命を狙われるような覚えは……ないこともないけれど、こんなに堂々と襲われるとは思っても見なかった。
……と、雰囲気に浸るのはこの位にしよう。
「何をやってるんですか、アヤさん?」
「あれ? バレちゃいました?」
首元の感触が消える。
後ろを振り向くと、イタズラっぽい笑みを浮かべたアヤさんがいた。
僕の首に当てていた凶器の正体は、どうやら屋台で買った焼き鳥か何かの串のようだ。
「そもそも、なんでアヤさんが王都にいるんですか? レーネの町の冒険者ギルドは?」
「ふふーん! なんとですね……このたび、私アヤは王都の冒険者ギルドで勤務することになったんですよ!」
それは凄い。
例えるなら、大手チェーンの地方支店から、昇格して本店に異動するような感じか。
一週間ほどアヤさんの働きぶりを見ていたけれど、優秀な職員だということはよくわかった。
今回のアヤさんの異動は昇格もあるけれど、スタンピードの報告という仕事も兼ねてのことらしい。
「おめでとうございます」
「あれ? 反応薄くないですか?」
「そんなことないですよ。流石です」
凄いと思ってますよ。
ただ、その前の子供っぽいイタズラのインパクトが強いだけです。
「王都にはいつ来られたんですか?」
「4日前ですね。久しぶりの馬車だったので、少し疲れました」
なるほど。
確かに、スタング平原を歩いていた時、通行する馬車を見かけた。
「アラタさんは今日着いたんですか?」
「はい。丁度、先ほど着いたばかりです」
「それなら、また案内をしましょうか?」
「いいんですか?」
「勿論です。レーネでは、中途半端になってしまいましたからね」
アヤさんが王都の冒険者ギルドで勤務するのは今回が初めてだが、以前にも王都を訪れたことはあるらしい。
なので、簡単な案内ならできるそうだ。
それは素直にありがたい。
前回、レーネの町を案内してもらった時も、アヤさんの説明で色々なことがわかった。
王都も僕の知っている王都と違うだろうし、正直ひとりで歩き回るのにも不安がある。
迷子になるのも、知らない町を歩く醍醐味。
だけど、折角だからアヤさんの提案に乗ろう。
「よろしくお願いします」
「はい、よろしくお願いされました」
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