第101話 どんな戦いに於いても生き残る
シアンとトリル……と言うよりはライラとトリルの姉妹と語るべきか。何れにせよ二人の同時詠唱により、完璧な形での
その力を取り込んだシアンは、これまでにない自らの
「エスポロシエーネ・ルクエアーニ……」
「え、詠唱? マーダが詠唱をするだと?」
此処にいる誰もが耳にしたことのない言葉をマーダは、実に気持ちを入れて
魔法の詠唱と言うより、これより神から人々に言い渡す
エディウスの姿をしていた際にゼロ詠唱であったため、そこにシアンは喰いついた。
「フフッ……。この術は
「ほぅ……
「それに我とて、あの
余裕の笑みを浮かべながら、シアンに
「し、シアン様はなぜ黙って見ているのだろう……」
「レイチ、此処から先はシアンとマーダ……この二人の間に介入すべきではないよ」
自らの言葉で話すハイエルフのレイチとニイナ。遂にニイナによる風の精霊術、言の葉による
マーダ以外の者で、
ニイナに言われるまでもなく、もう
「………魂を持つ者達の罪を注ぐ
「…………」
テンポを上げも下げもせず、
緊張の面持ちでもって黙って聞いているシアンは「罪を注ぐ
背中に生えた炎の翼を広げたままの姿で、両拳を腹の辺りまで上げてステップを踏み始める。
そう言えばこれまで彼女が使っていた槍に、
「……
スーッと正面に差し出されたマーダの両手。そこに黒い
それが子供でも持てる程の真円の形となって
「さあ……往くぞ、準備は良いか? 此処まで来たら後は弾けるだけだが……」
「さて……それはどうかな? 意外と違う答えが出るやも知れんぞ」
一応忠告めいたことを告げるマーダ。それに対するシアンの顔が、
「や、やべぇッ! アレは
「ひぃぃぃぃっ! もう駄目、皆死んじゃいますよぉ!」
地上に向けて竜巻を出しながら、落ちるのを防いでいるレアットと、背中に翼を持つルチエノが大いに
「………ヴァイロ、我が主よ。貴様の優しさではこんな
「
カッ!!
ドス黒い真円はさらに凝縮後、凄まじき
「げ、原子の連鎖!? か、核分裂による爆発かッ!」
「ひ、人の扱っていい
(せ、
墜ちてゆくしかない
こんなものが
「こ、これが暗黒神の真の力………。
「グラリンっ、貴女らしくない。力だけが
「往くぞトリルッ!!」
―止めてみせますッ!!
あの
(なっ!? な、何をしている!?)
術の発動中は、例えマーダと言えど、ただ見ている以外に出来ることはない。さらに視界の端にシアンが放ったナイフを核とした火の鳥が、数羽飛んでいるを
火の鳥は全部で四羽。マーダとシアン、二人の頭上に1、足元に3。その点同士を線で結べば、
「ま、まさかシアン、トリル、貴様等は我と共に果てると言うのかっ!?」
「それもどうかな?
爆発の中心核へさらに拳を
火の鳥同士を赤い線で結び、仮定であった三角錐を現実化する。要は結界術の中に自分達とマーダ、さらに
「ば、馬鹿なッ!? こんな馬鹿げたことをするために、貴様等は不死鳥をこれまで
ようやくマーダは不死鳥温存の真の理由を理解した。
自分と共に核爆発を受けようとも生き抜くだけでなく、何をしても死なない肉体に大ダメージを与える
それには同じ不死の身体とシアン達がどう振舞っても出し得ない攻撃を、あえて出させることが不可欠というのが、シアンとトリルの見解だったのである。
「ヴァイロの悪夢を再現させて、その上を
「な、何とでも言うがいい。どんな戦いに
「ま、マーダァァッ!! 嫌ァァァッ!!」
核分裂の爆発の
だがシアンとトリルは知っていた。この地獄ですらマーダの自己再生を遅らせて、取り合えずこの戦いだけは、痛み分けに出来る。
…………たったそれだけの成果しか得られないのだ。
「アギド……、アズール……、ミリア……、リンネ………。そしてヴァイロよ………。済まなかった、お前達を亡き者にする
一方繰り返す爆炎の中で、燃え盛り続けるシアン。不死鳥とて終わりはあるが、炎の中に自ら飛び込み、再び燃え上がりながら
なれど核の炎であってもそれが通用するのかは、不死鳥を知り
―……シアン、そしてトリルだったかな?
「ヴァイ……ロ? お前? そ、そうか
―そういうことだ、アギドも一緒だ。黄泉はおろか地獄にすら
燃え盛る
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