第102話 戦の女神エディウスとカノンの未来
マーダに身体と魂を乗っ取られたヴァイロとアギドは、死んではいない。
マーダがその身体を核分裂の炎で失う
「ヴァイロ、アギド………。そして
―何を言うんだシアン、お前は約束を
とうとう涙を流して自らを
―そもそもこの戦いを始めたこと自体が
「し、しかしだっ! 結果お前達を失わせたッ! な、何をしても
自分達で仕掛けた結界の中で泣き
マーダに
―良いんだシアン………。これは俺が望んだ結果だ。
―そ、そうだ。特に俺なんて自分からエディウスに自らを差し出した。これでアンタに泣かれては、まるで立つ瀬がない。みっともなさ過ぎる。
あくまでも優しく語り掛けるヴァイロ。その脇から恥を帯びた声でアギドも告げた。
―シアン、そしてトリル……。大変なのは
「あ、嗚呼……。そ、そうだなヴァイ。お前
そろそろ消えそうな意識を感じ、
シアンが涙を
―………ありがとう、じゃあ………またな
「嗚呼、また会おうヴァイロ、アギド。取り合えずさよならだ」
やっぱり見える筈がないのに手を振られた気がしたシアンは、自分も手を振った。そして互いの再会を誓い合った。
「ば、爆発が……」
「お、治まってゆく……し、シアンっ!? 無事よねっ!?」
地上に降り立ったレイチとニイナが、誰よりも一早く
燃え盛る不死鳥の翼だけが見える。暗黒神と
「やったぁぁ! レイチっ、シアンが、シアンが勝ったよっ!」
「流石、僕達のシアン様だっ! シアン様ぁぁ!」
抱き合ってシアンに向かって手を振る二人。一見幼き少年少女の
「お、俺様本当に勝ったのか!?」
「うーん………。どうでしょう、あのマーダとやらのしぶとさを
「全くっ! ふざけんなっ! ゾンビや
もういよいよ状況が飲み込めないレアットに対し、
そこに
レイジの姉レイシャは、腕を組みふんぞり返って文句を並べた。
「自分の魂を持たぬ
「
「「ハァ………」」
「………っていうか
「ハゥッ!?」
「エディーの偽物なんて
元・白の連中に気づかれぬよう、抜き足差し足で逃走を
黒い二刀の
此処でシアンが意外な提案を言ってのけ、元エディウスの女衆を驚かせる。
「エターナ・アルベェラータ、貴女はこれからその名を捨てて
「「はぁっ!?」」
「え……そ、それってどういう……」
実にアッサリと「本物の女神になりたい」という夢を叶えてやろうと言い出したのだ。
これにはルオラとレイシャが声を合わせて驚くどころか、エターナ当人ですら
「簡単なことだ。エターナ、君はもうその名前で世間を渡ってはゆけぬだろう? よってエディウス・ディオ・ビアンコとして生きるより道はないという話だ」
「は、はぁ……そ、それで良ければ……」
「ルオラ、レイシャ、お前達だって祈る女神がいなくなっては失業も同然だ。特に司祭に至っては、元々彼女の力を引き出していた訳で、これで
「「し、失業……、む、無職……」」
「た、確かにシアン殿の言う事は一理ありますねえ……」
怒り心頭の連中を差し置いて、シレっと正論を告げるシアン。女神エターナでこそないが、元よりエディウスとして力を使われていたのだから、大した違いではない。
シアンから「失業も同然……」と言われ、
一番弟子と修道騎士の座を全て失うのは余りにも痛過ぎると感じる二人。グラリトオーレにしてみても最高司祭の座を維持出来る。
いや、それ以前にエターナを
「要するにこういう事ですね、エターナさんには今後
「う、うわぁぁ…………。わ、判ったわよっ!」
レイジが実にドヤ顔をエターナに寄せつけて言い放つ。プィッと顔を
こうしてロッギオネと首都アディスタラは、
なお、ちょっとしたifを付け加える。マーダがシアンに勝利した場合だ。
結局の処、エターナを戦の女神と
マーダとて自らが神を名乗るための足掛かりとして、アドノス島の
そもそも以後の歴史において、エディウスが神竜戦争に勝利し、ロッギオネ神殿における神の座をマーダにより許されると記述される。
「……レアット・アルベェラータ」
「お、おぅっ!」
「そしてハーピールチエノと、
「は、はぃっ!」
此処からシアンの顔が一変して曇り空に変化する。名前を呼ばれ、期待と不安に揺れる二人にたかが
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