第81話 混じりっけのない炎を吐くか
シアンが
何やら
偽物のエディウスからは、
この様子は、地上にいるシアンとトリルにも肉眼で確認出来た。
―……トリル、こ、これは一体!?
―わ、判らないわ姉さま。
「チィッ!」
自らの中に存在する思念体であるトリルに問いただすシアン。
たまらず舌打ちするシアン。
その中でも賢士最強のルオラと修道騎士の中で最も異質な実力者であるレイシャが、特に突出しているのである。
しかも何れも一度は苦労の
苦虫を噛む思いのシアンであった。
―レイジ、グラリトオーレ、エターナ、ルチエノっ! ルオラとレイシャは敵に回るっ! とにかく距離を取るんだっ!
―誰でもいいっ!
本当に適当な指示しか出せない自分にシアンは大変苛立つ。普段から空を飛んでいるルチエノはともかくグラリトオーレ、エターナに至っては、空中戦はおろか普段は後方支援が関の山。
レイジも自らの身体で空という
要は逃げろと言うには、余りに無茶な状況なのだ。一方、風の精霊の自由の翼で戦うのは、レイシャとルオラも初戦であるが、戦での前線経験という意味で二人は圧倒的。
しかもレイシャは、黒い二刀を振るだけで半径200mが攻撃範囲。だから浮いてさえいれば、移動する必要すらない。
嫌な想像通り、レイシャの影の刃がグラリトオーレとエターナを襲う。これは
「どうか
此処で意外な
一時的かつ多分に偶然も作用しているが、レイシャから射程200m圏内に誰もいなくなった。
ただ肝心なルチエノ当人が、ルオラとの距離を遠ざけることに失敗した。
ルオラは
「デエオ・ラーマ、
これはかつて彼女がリンネを標的にした術。術者当人がこの戦いにおいて感じた戦慄を標的の聴覚と心に浴びせかける。
その恐怖は
「ごめんなさいっ!」
それはまさに
「フフッ………。何とも運の良い連中だ。だが見るがいい、このエディウスに
「クッ………!」
「そして
それは本当に
最早命すら惜しまずにその身が粉々になるまで襲いかかって来るであろう。
加えてその恐怖は、即時で降りかかって来ることになる。ミリアが力づくでルチエノを救ったまでは良かったが、エディウスを
「アーハッハッハッ! 喰らえッ!
「し、」
「しまったっ!」
ヴァイロとミリア、この二人がこれに反応するが最早手遅れ。
何と10体ものシグノの口から、当たればその存在を歴史から葬り去る黒い火球が飛びだしてゆく。
「グオォォォォォォォォッ!!」
この叫びはその黒い火球を浴びせられた者の
それどころかその全てを我が一手の力で持って消し去ろうとする黒い巨大な生き物の魂の
ノヴァンはその
もしこの反抗が失敗すれば彼のみならず、騎乗しているリンネも消されてしまうであろう。
だがいくら最恐のドラゴンの炎と言えど、
「あ……」
「青い炎!?」
「ほぅ……
そう……ノヴァンの反逆の炎は美しい青。いくらドラゴンと言えど、生き物がどうやってこんなものを吐けるのか?
「グォォォ……」
「ま、負けるなノヴァンっ!!」
多勢に無勢、そしてやはり熱量の差が結果に結びつかないのか。ノヴァンの青い炎が連続する黒い火球に押され始める。
子供のようにその首を叩いて必死に
「ウガァァァッ!!!」
それはお世辞にも格好の良い雄叫びではなくなっていた。なれどだからこそ
火が
ただ跳ね返したその一つが、流れ弾となってリンネに向かって飛んで行く。
これは流石のノヴァンにもどうにもならない。
「ハァァァァァッ!!」
これは
「み、ミリアァァァ!」
「行くよリンネっ! 私達は……暗黒神の
「う、うんっ!」
「……フンッ」
半ベソをかきながらミリアの名を呼ぶリンネ。それに対し、拳を突き上げたミリアは
少し面白くなさそうに鼻を鳴らしたのはノヴァンである。9個の火球を
「は、
この言葉が足りないまるで頭が悪そうな声を上げて驚いたのは、言うまでもなく
(ミリアの想いは知っていたけど、嫁達とは!?)
此処まで知ってしまった
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