第80話 そんな悲しいことを二人は言うの?
ほんの少しだけ時間を
「そ、そのお話……。私達も当然入っていますよね」
このエターナからの発言の続きである。シアンはあえて声を掛けなかった。……いや、掛けられなかった。
だが此処で
「え、エターナ。君は判っているのか? この場面で
これがシアンがエターナを誘わない真意だ。
ヴァイロ等と共にエディウスを倒した女神を、人々は彼女こそ真の
ヴァイロ達が敗北して、エターナが生き延びた場合、神を語ったペテン師か。
加えてエディウスがヴァイロを乗っ取った場合は、どう扱いを受けるのかいよいよ判らない。
「シアン様、それは私がこの姿を
少し
加えて最早この者には、自分の腹の内を全て明かそうと決心を固めた。
「し、シアン様!?」
次のシアンの行動にエターナは、驚いてどうしたら良いのか
シアンは急にエターナの前で片膝を落とし、
「真なる
「し、シアンさんっ、お、お止め下さい。こ、困りますよ、こんなの……」
さらにシアンは、自分の槍の矛先を此方へ向けて、半ば強引に柄の側を信じる女神に握らせた。
略式でこそあるが、王族達が以後
そしてシアンは、その姿勢を決して崩さず、自分の判っている全てと、恐らくこうなるであろう未来を語り尽くしたのだ。
◇
そして場面は再び、エターナとエディウスの
エターナとグラリトオーレに一体何をされたの気になったエディウスは、自身に何らかの変化がないか全身に意識を集中する。
(ムッ?……心なしか脚と腕の治癒が思ったほど進まない? ……この者の魂を在るべき世界へ……っ!?)
「そのお顔、どうやら気づいたようですね。この奇跡……本来は、天にも昇れず、地にすら堕ちない
自らの身体の変調とエターナ等が自分に
これまでにない
「貴女様は、アギド君の提案を
「…………!」
「そう言われ、アギド君にキスをした貴女は、身体も魂さえもトリル様のことを捨てた。
エディウスのみならず、これまで激しい争いをして連中も置き去りして、淡々と語るエターナ。
その口調が尻上げりに相手を見下す感じに変化してゆく。
さらに内容がエディウスの考察すら超えてゆき、思い当たる
「あ、ああ……」
「貴女は身体に結び付く魂を捨ててしまった。シグノとかいう
「よ、よせ……。止めろ、それ以上……」
「エディウス、貴女の治癒能力は肉体と
エターナの話す一字一句に
どんな攻撃を受けても、どんな手を出してもこれだけ乱れ狂う彼女は、一番身近にいた筈の賢士ルオラですら、見たことがない。
バチンッ!
「黙れと言っているッ!」
「どれだけ多くの者から力を得たとしても、今の貴女は仮の肉体に魂を載せただけの
(……本来ならそのまま光の中に消えて逝くのですが、流石にそうはならないようですね)
とうとう声を荒げて平手で
戦の女神という
頬を殴った手を力強く握りしめ、憐れみを含んだ眼差しを送るエターナ。
エディウスにしてみれば殴った手よりも此方の方が余程苦痛だ。
「さあ皆様、今ならこの
このエターナの一言で、女神の定位置がトランプのクイーンの如く完全に反転した。
元のエディウス、アギドを
これまで散々なものに押し潰されどうにもならなかったが、一気に道が開けた気がしてきた、光が差してきた、いくら手を必死に伸ばしても届かなかった者が、向こうから降りて来た。
「ヘッ! 今なら殺れるってことかぁぁ!」
「
これを聞いたレアットが標的を変えて、一気
リンネも音速を超えた刃を今しかないとばかりに解き放つ。何れもエディウスに致命の一撃を見舞うと誰もが思った。
「ククッ………。そ、そんなものか?」
しかしエディウスは笑って、此方を
そしてリンネの
「……私の愛するルオラ、それにレイシャよ。一体そこで何をしている?」
「ハァッ!?」
「
エターナ達に混じって空に浮いて来ている嘗ての愛しい下僕達に、顔すら向けずに声だけ掛けるエディウス。
目つきだけでそれを
一方ルオラは、色のある声で昔の愛を語るような仕草。血の滴る偽物の腰から脚の辺りを撫で回す。
「え……、そ、そんな悲しいことを二人は言うの? あの時の……」
「「………?」」
急に少女気質な乙女声を出すエディウス。ルオラの煽りが効いたのであろうか?
その懐かしくも可愛げのある仕草にルオラとレイシヤは、つい惹かれる。
「………で、どうなのだそこの
再び……いやそれ以上にエディウスの口調が神を帯びている。
それは決して抗うことの出来ぬ縛りの始まりであった。
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