第8賞 最終決戦その3 逆襲の白
第75話 人と人の意志が一つに繋がるよう
マーダ……と言うよりもエディウスからアギドに姿を変えていた存在が、またもエディウスとして
その有り得ない事態の下では、シアンとトリルの互いに精力を失った感の静かな声が聞こえてくる。有り得なかった筈の再会について語り合うだと思われていた。
特に周囲にいる中でも、トリル=エディウスだと信じていた連中は、敵側の主力と思しき
エターナとルチエノに関しては、ある程度事情を知っているのでそれほどではないが、死んだと言われていたトリルが生きていたことに関しては、此方も
「わ、渡すもの……。トリル、お前にまだそんな悪しき力が残っていたとは……」
「
周囲の驚きなどまるで結界でも張っているのかように気にしない
その悪しきにウンザリしているシアンの声に張りがなくなり、今にも
もっとも線香花火が落ち
―姉さん、貴女がこの力を
―と、トリル!?
不意にトリルは
ただただ
でも……大事な話であることは確かなようだ。
―私はね、
―勿論知っている。せめて死ぬ前にと、不死鳥の半身を私に
―もう判っているんでしょ? ウフフッ……姉さんはいつもそう。
真面目を絵に描いたような顔で
―マーダ……あの人に身体も意識も乗っ取られたから、私は彼の中で魂を残すことが出来たの。身体こそ散った桜の花のようになっても、魂だけで生きていられる。身体の方は……ホラッ、あの人。
―やはりそういう事か。アレは一体何なのだ?
―それは私にも良く判らない。ただ200年前、最初に
―人形に意識を植え付ける!? 確かこの世が西暦と呼ばれた時代、ろぼっとという
姉の
―私もそちらの知識はまるでないのよ。ただ姉さんも知っての通り、知能というより知性……彼には自分の意志があるの。それをこれまで
此処まで明るく語っていたトリルに雲がのしかかる。エドル神殿の
―とにかく私はある意味
またもすっきりした顔に戻って笑顔になるトリル。作り笑いでも皮肉でもない。それを面白くないといった表情で返す真面目な姉である。
―それでも
―うーん……。確かに彼がやって来た事を褒め称えるのは違うと思う。でも、人の創りしものなのだとしたら、これも進化の過程の枝分かれの一つじゃないかって……。
―かと言ってだな………。
―でもね、彼って出来損ないなの。私を取り込んだのに不死鳥はおろか、エドルの力を何一つ継承出来なかったのよ。エディウスとしての彼は、
シアンは妹の真意がいよいよ測れなくなってきた。
―結局の処、
―あら、それはライラ姉さま、貴女が決めることだわ。他人が……例え血縁が何と言おうが傭兵シアン・ノイン・ロッソには、守るべき者の為に戦うという鉄の
「ふぅ………判った判った、もう無駄話は終わりにしよう」
「だね、では………始めますか」
トリルの姉ライラからシアンに戻った彼女は、
この深い息は、マーダという存在の考察をトリルから聞いた事で思わず吐いたという訳でない。
これから自分が最も
しかしもう他に選択肢はない。トリルの方は、初めからそのつもりなので落ち着いた笑顔を姉に
流石にシアンもこれに
「「『
一体何時ぶりか判らない姉妹の声が重なり響き合う。大きな声でこそないが、何か
「き、綺麗………」
「な、なんて
その美しさに見ている多くの者が声を失う。エターナが目をキラキラさせながら真っ直ぐな感想を漏らし、ハーピーのルチエノが語った言葉こそが、実はこの
互いの心を繋げ、相手に自分の能力を渡すことが出来るのが
トリルの側から光の帯の上を真っ赤に燃えさかる
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