第73話 仮初の命か…
彼女は、ニイナ、レイチに
「
そして何よりもマーダという意識が抜け落ちた、妹の存在が気掛かりであった訳だ。
不死鳥の翼も、ニイナから貰った風の精霊の翼も失ったシアンは、焼け野原と化した地面を
そこにはトリルだけでなく、最高司祭であったグラリトオーレや、気絶から持ち直した賢士ルオラの姿もあった。
グラリトオーレを抑える役目をアギドから言われていたエターナと、
けれども……たったそれだけなのである。確かにトリルへ
しかし自分等が信じた神の姿には違いない筈なのにだ。
「やむを得まい……。彼等とて我々と同じ、決して一枚岩ではなかったのだろう……」
実に寂しげな顔でシアンは、気がつくとその思いを
ヴァイロが貴族の金を手土産に軍を作ったのと同じことだ。
いや……まだ
『神による正義を
エディウスに従軍した者の中には、そんな理不尽を
そういう事情があったとしても何ら不思議でない。
だから|白い生きる
さて、シアンにとって肝心な妹トリルの話に移る。
生きていたとはいえ地面に倒れていた彼女を、グラリトオーレが自ら
だけども
「やはり……
細胞分裂の活性化を
とにかく手を握りたいと深く願い、シアンは行動に移る。
(温かい手だ……)
今はそれだけで、その上は望まないと感じているシアンである。
「ね、姉さん……
「トリル……それはとうに捨てた名だ。そもそも姉であることすら私は投げた」
ライラ……それこそがこの心優しき傭兵の真の名であるらしい。弱々しい声を震わせながらトリルは告げる。
対する
断じて妹を否定しているのではない。己自身を否定しているのだ。
「貴女に……渡すものがあります。ライラ姉さんにしか扱えないものです……」
「何っ!? そ、それはまさかっ!?」
トリルの焦点は定まっていない。それはもう目が機能不全なのか、あるいは自己否定する姉の話を取り合うつもりがない意志表示なのか。
◇
マーダ……彼はまともな存在ではない。他人の身体と能力を乗っ取れるという一点だけでそれは明白。
だが人間の身体を借りてる以上、そのタフネスさも本来なら、それ以上にならないのが
しかしたった今、
これはひょっとしたら首を落としたり、心臓を一突きにしても生きながらえるのではないか?
だとするなら、戦いの在り方すら
嵐のような波状攻撃も
第一無駄に手を出しては、アギドの二の舞になり
「まあ
気が変わったのであろうか。嫌らしい笑みだけはそのままに、語るまでもないとマーダは、言い出したのだ。
「………いや、何、このアドノス200年の歴史を構築したなどと聞けば、俺のみたいな
顔こそ
「フッ! とんだ浅知恵だなぁッ! 我の弱点を聞き出そうとしているその意識が、
「クッ! ならば
本来なら怒りに任せて本音をぶちまけたい処だが、最早そんな考えすら
「………成程成程、良かろう。貴様と違って我に取り込まれぬ
「………実に
(サッサと語れよ……
少しは相手を
目上の存在に対する
けれどこの
こうした
───そう思ったが、これは
「まあ、知った処で無駄だがなッ! 我の中に囚われた
「なっ!?」
「た、魂がないっ!?」
またも……いやさらにマーダの
しかし最早そんな事は
ヴァイロのみならず、そのイカれた発言に皆がどよめく。
「意識はあれど魂はない」と
ヴァイロは先ず
なれど他人の血を
後は錬金術師が作るという
などと思考を
マーダは後ろに手をやると、その内の二頭が剣に姿を変えて、新たなる
刃の色が赤い、そのまま人の血の色を再現したかのような不気味さがある。その他のシグノ達も何やらこれまでとは異質なものをヴァイロは感じた。
(ま、まさか此奴等……兵士を……人を
(…………っ!)
「おぃっ! そこのうすら
人を喰らい、まがりなりにも
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