第70話 …30秒あれば充分だ
「や、やったのかっ!?」
「分子レベルで肉体を
アギドの肉体という余りにも
ヴァイロですら、そう確信したにも関わらず何やら
「素晴らしいィィ! これが恐らく
「なっ!? ば、馬鹿な貴様! 何故そこにそうしていられる!?」
他にも様々な攻撃をその身に受けたし、その前にも肩口をバッサリと斬られていたのに、完全に無傷な状態でそこにいた。
「
「ならば何故っ!?」
「おぃおぃ、そろそろ気づいてやらないと、あの世で
迷える子羊達にヒントを与え、その反応をさらに楽しむマーダ。確かにノヴァンに騎乗していた筈の
「いつまでも犬の首輪なんぞに良い様にされる我だと思うてかっ! 捕まった瞬間に
「まさか
「正解だ、あのコボルトは、一体何回死んだのであろうな……」
「い、言うなっ!」
「しかもこのアギドとかいうガキの姿に対する情け
色々とヴァイロ等の
特にミリアにしてみれば自分がカネランにけしかけたのがきっかけだと思い込むと、せっかくリンネのお
「…………」
「…………リンネ?」
気がつけば再びミリアの
ただ強く握りしめ、こちらに曇った顔を見せてくるミリアに対し、何度も強く首を振るだけである。
「さて………この身体にもようやく慣れてきたようだ。どれ、そろそろ遊びは止めて本気で
「…………っ!」
両手の指をボキボキと鳴らしながらニヤッと周囲に笑い掛けるマーダ。ヴァイロ等の緊張の糸が張り詰めてゆく。
◇
「………
一方異空間を
「「なっ……」」
「やっ、やったぁ! 成功ッ!」
武器の
求めていた二人は、まんまと闇に引きずり出された。
慌てふためく姉弟の双子。
驚きの発声をしていることに違いないが、シアン等に伝達する空気が存在しないため、少々間抜けに見える。
(な、何故こんな所に私達はいる?)
―やあ御二人共、ご
脳に直接届く声がグエディエル
「し、シアンの声が届くっ!? エルフのガキ共すら
―まあ気分上々とはイカンだろうな。そちらには酸素すらない。
シアンの声、
―ニイナの生き物を
(ば、ババア! そ、そうかっ! レアットとかいう馬鹿もあの時コレで呼び出したから、助かったのかっ!)
そんな相手の
この状況を中々にいやらしく利用する。
―さぞ息が苦しかろう? どうかな……いっその事、その
姉の
(………我ながら無理を言っている。2分以内に抜け出せなければ、不死鳥の効力切れで負け確は此方なのだ)
これがシアンの本音。何より此方の三人は一見余裕そうに見えるが、実の処ジリ貧なのだ。
魔法の結界内に残っている酸素なぞ、たかが知れている。
対するレイシャ側は、まだ40秒といった処。要は
「……フッ、良くてよ。私もこんな
やれやれといった
用心深い弟レイジとて姉の勝利は動かないと確信している。後は腹を
「じゃあ、やるから覚悟なさいっ!」
黒い二刀を
けれども此処にいる
踏ん張りが全く効かない中での見事な
此処からシアン達は、頭の中でアナログ式のタイムウォッチの針を意識し始める。
既に残りは、分を切っている。50、49、47……。
闇に
異空間が割れて、
全員の目に入ってきた景色。間違いなく元々いたカノンとラファンの境にあたる元々いた戦場の空に
「さあっ、どう出るっ? 間もなく30秒を切るぞっ!」
「…30秒あれば充分だ」
愛刀の黒い刃を
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