第6話 白の挑発
ミリアは慌ててベッドから飛び降りる様に起きると、黒いマントだけを
「ミリアっ!」
「アズっ! 貴方もアレを見たのですかっ!」
途中ミリアはアズールと偶然の合流を果たす。
「寝てたんだけどよっ、何故か目が覚めたんだ。それにあれだけデカけりゃ嫌でも気づくぜっ!」
普段あまりこの少年の言う事に耳を貸さないミリアだが、この時ばかりは
ツリーハウスが近づくにつれ、次第に白い物を見る焦点も合ってくる。
「し、白いっ……」
「
「しかも人が……騎士が騎乗しているわっ!」
人の10倍はあろうかと思える巨大なドラゴン。まるで白鳥の様な翼を広げて
そして
「あっ! ヴァイとリンネだっ!」
アズールが家から飛び出してきた二人に気づく。
それを見たミリアは、思わず先程捕らわれた感情に一瞬心を支配される。
(い、今はそれどころじゃないっ!)
首を強く振って余計な感情を振り払う。
「グラビィディア・カテナレルータ、
落下しながら
二人だけではない、その
(ほぅ、重力を捨て空で我とやるつもりか。余程
(し、白い竜に白い女騎士!? 夢で見た通りだとっ!?)
「受けろ我が
「クッ! 『
白い女性の騎士は巨大な剣を両手で悠々と抜くと、白い竜を落下させながら大胆にも大きく振り下ろす。
信じられないスピードではあるが、流石にモーションが大きい。
ヴァイロの剣
剣先から
「貴様っ! 一体何者だっ!」
「我が名を聞くか……良かろう。我は『エディウス』。神聖なる地、ロッギオネから来た神と
明らかに
「……ペソ・クアンティア、
エディウスの背後、さらに上の方から小声で詠唱した少年が、二刀を振り下ろす。今度はエディウスの方が、上から攻撃を受ける
正体はアギドである。ヴァイロに気を取られている間に、後方に回っただけでなく、
(クッ! 完璧に背後を取ったのに受けるかよっ!)
(な、何だこの者の剣? こんな
アギドもエディウスも互いの能力に驚いているのだが、声はおろか表情にすら出さない。心理戦でも斬り合っていた。
「ロッカ・ムーロ、
次は若い女の詠唱がヴァイロの背後から続く。透明な
「
さらに少年の詠唱だ。赤い
アズールが特に好む魔法の一つだ。しかし残念にも竜の炎のブレスで
けれどこれは
「
アズールが次に魔法の標的にしたのはヴァイロだ。全身を
「攻撃強化の魔法か……。魔法力も中々だが、何よりもその連携。詠唱時間すら計算に入れて魔法の弱点を
ドラゴンに騎乗しているとはいえ一人の
しかし余裕という言葉が、まるで彼女の為にあると思わせる程の存在力だ。
(……悔しいけど一人
「
エディウスの言葉に心の中で冷笑しながら思うミリア。
これまたいつの間にかエディウスの上に回ったリンネが全身を逆さにしながら、両手を突き出して叫ぶ。
(火炎の息!? だが竜なぞおらぬっ!)
「…『
見えざるドラゴンの火炎の音だけが、確かに聞こえた気がして流石に
その音でアズールの詠唱が完全に彼女の耳に届かない。
巨大な火の玉がエディウスの後方で
「クッ……偽の火炎の音に
「なっ!? 火傷一つ
爆煙の中から現れたエディウスは、ようやく悔しさを
「
「グッ! ま、また耳がっ!」
リンネが今度は音だけの雷を落とす。本物の様な雷鳴に、流石のエディウスも耳を
そこへ届く筈のない赤い
ヴァイロの剣に違いないのだが、刃の間合いには全く足りてないというのに、ムチの様に伸びて
「冗談ではないっ!」
エディウスはこれを剣で受けようとしたが、赤い太刀筋がコレをアッサリすり抜ける。
「なっ!?」
エディウスの代わりに白い竜がその翼を折りたたんで受けた。無数の白い翼が宙に舞い散る。
(成程…コレが奴の
(こ、これでもあの騎士本人に届かないというのかっ!)
ようやく攻撃が届いたヴァイロの方が歯を喰い
確かに竜の翼こそ斬ったが、まるで
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