思い出すことができない少女と出会った冒険者

森 拓也

第1話

「はぁっ、はぁ、」


 俺は息を切らし、魔物に襲われて大きな傷を負っている少女を見つけた


 そして、俺が放った斬撃で魔物は倒れた



「大丈夫か!?」


「人間……」


「かなり出血しているな、このポーションを使え」


「すごい、傷が……」


 俺は少女にポーションを渡し、少女の傷を治療した


 少女は傷が治っていく様子に驚いていた



「助けてくれて、ありがとう」


「おう……俺はリヒト、冒険者だ。お前は?」


「……わからない、」


「わからない、どういうことだ?」


 少女は自分が誰なのか、どこから来たのか思い出せない様子だった。



「……何も思い出せない……自分が誰なのか、名前も何もかも思い出せない……気が付いたらこの森にいて、魔物に襲われて――痛いっ!!」


 少女は突然痛みを感じ、頭を抱えて気を失ってしまった



「おい!大丈夫か!?おい!」


 俺は少女が気を失ってしまったことに驚き、体を動かして反応を確認する


 しかし、少女は反応しない


 ただ、呼吸をしていることを確認し、俺は一瞬安堵の表情を浮かべた


 そして、すぐさま少女を抱えて帰路についた



「大丈夫だ、俺が守るからな」


 彼女が心配なので、俺は彼女を抱え、優しく声をかけた





 ◆◆


「ここは......?」


「よかった、目が覚めたみたいだな」


  少女は額に手を当てながら、ゆっくりと体を起こした


 声をかけると、少女が目を開けた



「また、助けてくれたの?」


「まあな、いきなり倒れたから、止まった宿に連れて来たんだ」


「見ず知らずの私を二度も助けてくれて、本当にありがとう」


 少女は深く頭を下げて感謝を伝える



「どういたしまして……で、何か思い出せたか?」


「……まだ、何も」


「そっかぁ、うーん、、」


 少女は困ったように下を見ている



 金が必要な神殿へ行かないと記憶が戻らないようだが、見たところ所持品は何もなく、俺自身も余裕があるわけではない。



「……とりあえず、呼び方は決めておくか!なんて呼ばれたい?」


 元気づけるように尋ねると、少女は特に希望がないと答えた



「分かった、じゃあアオだ」


「髪が青いから?」


 そう尋ねる少女に、俺は満面の笑みで「そうだ!」と答えた


「……安直」


「嫌か?」


「ううん、アオがいい」


 そう答えたアオは少し頬を緩めた



「まだ聞きたいことはあるが、もう夜も遅い。話の続きは明日だ。おやすみ」


 そう言うと俺は隣にあるもう一つのベットに横になり、すぐに寝た


「......おやすみなさい」


 少女も後を追うように眠りについた。





 ◆◆


 チュンチュン――鳥のさえずりが朝を告げる


 俺は先に目を覚まし、アオが起き上ろうと体を動かすのを見た



「ん~ん、朝か?」


「おはよう......起こしちゃった?」


「いや、むしろいい時間だ。食堂に行って朝飯を食おう」


「……でも私お金持ってないし、それにここの宿代だって……」


「ま、とりあえず話は食ってからだ」

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思い出すことができない少女と出会った冒険者 森 拓也 @1a2bxg19

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