★1話 不思議な君
「ん。ここはどこ。」
気づいたらいた知らない場所にいた。記憶がない気がする。という顔をしている。少年がいる。
「あら起きたのね少年。」
「君は誰?」
「今日こそは覚えていてくれてるんじゃないかって期待してたんだけど…」
「なんかごめん。」
「いいのよ。慣れてるから。」
美しい黒髪の少女こと私は微笑んだ。
「ところでここはどこだかわかる?」
「やっぱりこの質問からね。この質問が一番難しいのよね。ここに名前はないわ。特に誰も名前をつけて呼んでいないから。」
「君はなんて言うの?」
「私はレーヴ。よろしくね。」
「よろしく。」
「いつものテンションね。今日はあの洞窟に行こうかしら。君が寝ている間に見つけたのよ。」
「僕はいつも君と行動しているの?覚えてなくて。」
「そうね。毎日こうやって君を迎えに来て一緒に遊びにいってるの。最近はあの山に登ったかしらね。」
そう言って私は後ろの山を指さした。
「さあ。君と話をしてるのも楽しいけれどさっそく歩きましょ。」
私が歩き出すと彼もついてくる。彼を私は君としか呼ばないのは名前の部分も記憶を無くしているから。最初の方は名前を聞いていたのだけれど、最近は私から質問することは無くなった。彼が悪い人じゃないのは話していて分かるし、名前を知らなくても良いかなって思ってきた。
「着いたわ。今日はここを歩きましょう。」
「ここ暗いよ。歩きにくいんじゃない?」
「大丈夫よ。ライト。魔法を使えば明るくなるのよ。」
「すごいね。」
「君はいつも驚く。寝る直前には立派に魔法を使えるようになるぐらい魔力があるのに。」
「そうなの!僕にもそれが使えるんだね。」
「使えるわよ。まあここの洞窟を抜けるくらいには多分使えるようになっているわよ。教えながら歩いていこ。」
彼に魔法を教えながら歩くのはやっぱり楽しい。あ、魔物だということは…
「何あれ怖い。もしかして襲ってきたりしない?」
「襲ってくるよ。」
「えっ!どうするのあんな強そうなやつ。」
今回はスライムか。強そうかな?慣れてるから怖くないように見えないけどね。
「任せておいて。ファイヤーボール。」
私の放った青い炎がスライムに当たり散っていった。
「すごいね!君は強いんだね。」
「これも君は毎日できるようになってるんだよこれも練習しようか。」
洞窟の出口が見えてきた。彼は今日も魔法を使えるようになった。そして、そろそろ夜が明け、彼が寝る時間が来る。今日も楽しかったけれどきっと彼は明日には全て忘れているのだろう。だけど私が覚えておこう。いつか彼が記憶を持って起きた時に全てを話してあげられるように。
「さあ、出口だ。お疲れ。」
「今日はありがとう。ふぁー。眠いね。」
「うん。おやすみ。」
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