第10話「覚醒」



困った。


実に困った。




最近、とある欲求がことある事に訴えをかけてくる。


胸の谷間が見えたとき。

物を持ち上げようとするときのお尻。

窓を拭く時に隙間から見える腕のつけ根。

高い場所の掃除をするときの膝裏。

そして透ける下着。



………。



そう……。性欲だ。

若者の青春が詰まったアレだ。

この前の討伐以来、ムラムラが治まらないのだ。さっき挙げた例を考えると突然頭でも狂ったのかと思われるのかもしれない。

しかし、若者の童貞力を舐めてはいけない。

どんな些細なことでも煩悩に昇華できるのだ。


ただでさえ常に控える専属メイドは目に毒だし、他のメイドも色っぽい。

こんな環境に身を置いている時点で俺の理性には勝ち目は無いのだ。というか男は勝てない。



そして、この猛りを鎮める方法を俺は1つしか知らない。


いや、正確には2つだが、1つはこの歳では難しい。

なので、とうとう数日前から股間に手を伸ばしてしまった。


何が悲しくて異世界まで来てこんな原始的な行動をとらにゃならんのよ……。



そもそも精通すらしてないってのに……。

つーか精通っていつだっけ?たぶん個人差はあるはず。俺は早いのか遅いのか。



という感じで困っている。



まあこればっかりはどうしようもないので、開き直るしかないか。宦官になるわけにもいかんし。



□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■



今日も1日訓練をして過ごした。


最近は新しい型も使い始めて、これが中々楽しい。うまくハマればまた一段と強くなれそうだ。


さて。今までは訓練の後は湯に浸かっていたが、湯に浸かる前に別の日課ができてしまった。


すなわち右手運動である。


今日も今日とて右手を動かす。






えっさ、ほいさ。





えっさ、ほいさ。





えっさ、ほい……ん?










あ、これ。通じちゃうんじゃね?


しかし止まれん。致し方なし。

右手はストローク、左手はハンカチ待機。










おぅふ。




ふぅ。




久しぶりだ。この虚脱感。虚無感。俺は今、このときだけ賢者になっている。











《スキル「自家発電」が覚醒しました》







……はぁ!? え?? はぁぁあ!??









《「姉の双丘に包まれて」を解放しました》


《シコ値が50P付与されます》








シコ!? え? なんて!???


矢継ぎ早に頭に響く無機質な声。本来はこの現象についてパニックになるべきだが、聞こえた言葉がやばい。とんでもなく頭の悪そうな言葉が聞こえた気がする。



そうだ!ステータぁぁス!



アルスレイ・フォン・オルヴァス

Lv 2

HP 80

MP 255

STR 115

INT 248

DEF 65

DEX 552

AGI 274

LUK 80

シコ値 50P


スキル : 自家発電

覚醒項目 : 解放履歴






聞き間違えじゃなかった……

シコ値て……頭悪すぎだろうこのスキル……

なに閾値みたいな呼び方してんのよ……

バカじゃねえの……


転生してはや6年。これ程打ちのめされたことはない。


シコシコしてシコ値を生産するから自家発電って?放出の間違いだろうがよ。

スキル設計したやつ誰よ。神か? よくある創造神とか世界を管理してる神とかか?


唐突に異世界でやる事が1つ決まったわ。

神をとっつかまえてヤキいれてやらァ。






……………………。参ったな、これは……。









《スキルが覚醒したことにより「自家発電」の説明と解放項目を参照できます》







いきなり喋んなし。


ひとまず深呼吸だ。素数も数えよう。


とりあえずこのスキルが下品なのは分かった。

分かった上でしっかりと把握はしなければならない。下品だが。



どれどれ。

ステータスを見つつ、まずは「自家発電」に意識を向ける。



「自家発電」



自身の分身を摩擦、刺激することで精を解き放つ。精を放つ際に思い浮かべた情景が新鮮なほど、その効果は増大する。

同じ情景で放った場合は回数に応じてシコ値は減算される。

得られたシコ値はステータスに振り分けることができ、振り分けられたシコ値は2秒に1シコ値ずつ賢者となる。

また、シコ値は累積可能。





なんということだ……。説明がバカすぎる。

バカな説明をそれっぽく書いたが結局バカ。みたいな文だ。

読んでて鬱になりそう。



まあいい。続いて解放履歴だ。



「解放履歴」



情景の履歴。解放した情景に思いを馳せることができる。


【解放情景一覧】


「姉の双丘に包まれて」






もうさ。誰が得すんのよ。

自分のネタを目で読んで。

勘弁してくれないかな、自家発電さん。



いやさ。このスキルたぶん強いよ?

ために溜めて、いや貯めてか。ここぞという時に莫大なステータスアップできるんでしょ?

強いよ。まじで。強くなれるのは嬉しいよ。素直に。












「けど…………

これはねえだろうがぁぁーー!!」











「どうされました!アルスレイ様!」



部屋に駆け込んでくるミリア。



「アルスレイ様!? 失礼しました!」



いや……ことを終えてからスキル覚醒、把握している間、下半身丸出しだったわ……。


くっそ恥ずかしい。窓からダイブしたい。


ズボンを履き、格好を整える。



「ミリア、いるかい?」



「失礼します。アルスレイ様」



恥ずかしそうに入ってくるミリア。そらそうよな。仕えてる人間が下半身丸出しで叫んでいたんだもの。どんな顔してよいか分からんよな。



「ミリア、さっきのことだけど」



「は、はい」



珍しく狼狽えている。



「ミリアは何も見なかった。というか忘れてくれ。良いね?」



「は、はい」



羞恥を感じ、俯きがちになるミリア。

やばい。羞恥心で赤くなるミリアでまた違う解放をしてしまいそうだ。



「では、また少し1人になるよ。すまなかったね」



「い、いえ……失礼いたします」



ミリアが退室し、また1人になる。



…………。


俺は見られても興奮するのか……。

自分の新たな側面に戦慄を覚える。

こんなの前世だと裸コートのチカンと変わらないではないか……。


もしかしてスキルに引っ張られてんじゃないかな?これ。




はぁ。もう今日はダメだわ。

メンタルが打ちのめされすぎている。

夕食もまだだけど寝てしまおう。

あんなことの後だ。ミリアが上手く言い訳してくれるだろう。


今後は癪ではあるがスキルの使用にもなれていかないとな……。





おやすみなさい……。






















《「羞恥の入口」を解放しました》


《シコ値が100P付与されます》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る