精神に闇を飼っている人がいる。かくいう私も飼っている。闇くんは一日に数回こちらにやってきては、毒を吐いてまたどこかに行ってしまう。私は彼を飼っている自覚があるので、一ミリも外に出ないようにリードをつけている。

 私の友達にも、闇を飼っていそうな人がいる。その人はたまに私を引きずりこもうとする。怖い怖い。闇を暴走させないでくれ。これはマナーだ。

 闇というのは、なぜ生じるのだろう。光を追い求めるあまりに生み出してしまうのか。光に対する執着心が強いほど、闇もまた深いような気がする。

 からりと明るい人になりたい。ずっとそう思ってきた。だから飼っている闇がうっとおしかった。何度も捨てようとした。しかし彼はいなくならなかった。彼は彼なりの存在理由があるのだと、私は自分を納得させている。これからなんらかの場面で役に立たなくても、なにか。理由が。……ないかな? なくても、まぁいいや。いるのだもの。だったらせめて攻撃しあわないように不可侵条約を結ぶしかない。

 今思ったのだが、我慢せずに自分を優先させて生きてみたら、闇くんは納得するのかもしれない。そうしよう。いい子はやめだ。それでいいかい? 闇くん。

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