カースト

 私はクラスでどういった立ち位置だったのだろうか。もう目も当てられない最下層とばかり思い込んできたのだが、冷静に振り返ってみるとそうでもないような気がしてきた。なにせ友達は優しく成績優秀な方ばかりで、友達の平均が自分自身なら、私は無口なだけの文化系の二軍あたりではなかったろうか。そう、無口であるがゆえに自分をカースト最下層と思い込んでいたのだが、得意なことは複数あったし、友達も変人ではなかったし、やはり私は普通の人間だったのだ。少し無口というだけで。そしてそれをかなりコンプレックスに思っていただけで。欠点をよほどだめなことと考えすぎたのが良くなかったのだろうなぁ。欠点なんて誰にもあるし、欠点があるくらいで私の価値は左右されないわけで。裏を返すと、少し特技があるくらいで私の価値は左右されない。そう、できるできないで人の価値は本来変わらない。左右されない。何もかもが余興なのだ。それに、得意不得意なんて、全て受け入れてしまえば平坦だ。それが美しいと思う。どんな人生にも優劣はない。あるように錯覚しているだけで。だから、私が借りにカースト最下層であろうと、二軍であろうと、そういうくくりにはなんの意味もない。人の価値を左右しない。それを高校の時点で気づいていたら、さぞ生きやすかったろうと思う。まぁそうじゃなかったのが確定の世界線なんだけどね。高校の自分に言いたいことは、「あなたはそのままで素敵なんだから、何も付け足そうとしなくていいんだよ」という言葉である。しかし、付け足そう付け足そうとしてきたあの年月が無駄だったとも思わない。無駄でもいいけどね。でも、かけがえのない日々だった。未熟で、精一杯背伸びをして、同級生をひがんだりしていたあの日々を私は尊ぶ。そして、カーストなんて存在しなくなった今とこれからを、私は悠々と泳いでいくだろう。それでいいのだ。

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