第40話熊




ああ、又も雪の季節だよ。


シンシンと降ってるな。


「大変です。SOSです。信濃の村がひどい惨劇が起きたようで、熊の仕業のようです」


「猟師は、何をしているんだ」


「どうも賢い熊のようで、猟師の1人も重傷で危ない状態のようです・・・身長3メートル越えの熊です」



こんな場合のために猟銃会の組織も作ったのに、由々しき非常事態だぞ。


▼活動内容


委託された害獣駆除(熊、鹿、猪、狼、ウサギ)


狩猟時の安全啓発運動


射撃大会


新人育成


用具販売


そんな地道な活動で女性会員も増えた。


そんな矢先なのに重傷者を出してしまうなんてあり得ない。

被害の出た害獣駆除には、15人以上で対処するのが決まりだ。

1人での行動は絶対に禁止。

最低でもペアで行動してるハズだ。それなに・・・


ツキノワグマが立っても、精々1.4メートルだよ。

もしかして北海道のヒグマか・・・


ヒグマのオスでも約1.9~2.3メートルだ。

それが3メートル越えなんて、異常なヒグマだぞ。





俺は、急いで瞬間移動で信濃に行った。


「これはこれは、お早いお越しで・・・」


あ、はやく来過ぎたぞ。SOSですぐに来たからな・・・


「ああ、たまたま近くまで来てたからね」


「そうでしたか・・・わたしは、信濃猟銃会の会長を務める山田です。1度お会いしたことがあります・・・こんな辺ぴな所までお越しいただき感謝してます」


1度会ったの・・・覚えてないや。

あっちこっちで猟銃会組織を作ったからね。

この時代は、仏教のせいで動物たんぱく質をあまり取らなかったかえあね。

しかし、三言寺の教えは、食べていいと教えてるから・・・



「前置きはいい。被害を教えてくれ」


「村の被害は、老人2人が重傷。子供10人、母親2人が軽傷で御座います。熊は興奮していて異常で御座います・・・槍で戦った者の話では、胸に折れた槍が刺さっていたと・・・それが原因で冬眠しないのではと考えております」


成る程、もっともな意見だ。


「猟銃会の被害者も中々の名手で御座いました。ペアで行動していた相棒の話ですと足跡を追っていたそうです。途中で途切れたのでおかしいと思ったそうで、周りを探していたら草むらから急に熊の手が襲ってきたと・・・その一撃でざっくりと腕が裂かれて気絶。あわてた相棒も鉄砲を撃って熊の手に命中。その音と痛さで逃げたそうです」


救護担架で運ばれていた人に、光魔法を発動。

真っ青な顔が、みるみると赤みをおびる。


「え!痛くない。治ってる」




治った患者をそのままにして走りだす。

行き先は、襲われた村だ。


凄い光景だな・・・家がめちゃくちゃに壊されてるぞ。


「重傷者と怪我人は何処どこだ!」


「こちらです」


壊されず済んだ家に、重傷者と怪我人が治療中だった。


重傷者を光魔法で治した。

怪我人も治した。

もう、心配していた家族の喜びは半端ないよ。


「ありがとう御座います」


もう、泣かなくていいから・・・





聞いた通りに地図で確認しながら、猟師が襲われた現場へやって来た。


ああ、血痕が残ったままだよ。

熊の身になって逃げた方向に歩きだす。



1時間歩いただろう。

殺気を感じた。

とっさにジャンプした。


俺が居た場所の近くの地面から、巨大な熊が飛び出しているぞ。


「グルウウウーー」


凄いうなり声だ。

ああ、胸の槍が見えた。


「あ!なんてこった!!」


俺のわき腹がかすった感じだったのに、凄い出血だ。

急ぎ光魔法を発動。

あ!めちゃ速い速度で熊が突進して来たぞ。


やっちまった。

奴の胸の槍辺りも光だした。

槍が抜けて治ってしまったぞ。


俺も治ったが・・・


それにしても熊の変わりようにはビックリだよ。

赤茶色だった毛色が白色に変わってるぞ。


動物の血であんな色になってたのかよ。


「クウウウウ・・・・・・」


え!可愛い鳴き声に変わってる。


「クウウ、クウウ」


こっちに来いって言ってるのか・・・


熊は、のそりのそりと歩きだす。そして振る向くのだ。

仕方ない・・・ついてゆく。



え!!4メートル越えの熊が居やがった。

近くには、鹿の骨があった。


この熊も槍が背中から2~3本も生えてるぞ。


ああ、後1日後には死ぬな。


「クウーー、クウーー」


治してほしいのか・・・


「クウーー、クウーー」


「わかった。治すよ」


光魔法を発動。


ああ、こいつも真っ白に変身したぞ。


この2頭の熊は、アルビノなのか・・・

メラニンの遺伝情報の欠損により先天的にメラニンが欠乏する生き物なんだろう。

だから真っ白なんだ。



え!めちゃくちゃ足を舐めるぞ。

もうよせって・・・


ああ、これでは殺せない・・・困ったぞ。





仕方ないから村へ連れ帰った。


「三言さま、これは一体何事ですか・・・」


「この熊は、仏の使いの熊だ。俺がピンチの時に現れて助けてくれたんだよ。あの悪い熊はやっつけたから心配無用だから・・・」


「そうでしたか・・・なんと神々しい熊でしょう」


被害にあった家族には、もう受取れませんって言うぐらい補償金をだしたよ。

壊された家は、早く建替えないと冬がやって来るからね。




この2頭、どうしたものか・・・

信濃から加賀まで大変な道のりだぞ。

試しに2頭に触ったまま瞬間移動だ。


あ!呆気ない程に成功したぜ。



三言寺には、裏側には使用してない土地があるから柵をじゃんじゃん作った。

そして、中に放った。


土を盛った中に穴蔵を作ってやったぜ。

鹿の肉をめちゃくちゃ食ったら、穴蔵に入って冬眠してたよ。


現金な奴らだ。

ちなみに2頭ともメスだった。そして姉妹熊なのだ。



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