第38話織田の伊勢攻め




伊勢平定を言われるとは、思いもしなんだ。

これは物にすれば、我が織田軍は侮れ無くなるだろう。


国を守る兵を残す必要はない。

周りは同盟国で守られているのだから、何も気にする必要もない。

全軍で攻めても尾張を奪われることは無いのだ。



北伊勢の有力氏族である長野氏や神戸かんべ氏を降して、早々に北伊勢を手中に収めた。



それにしても、長島一向一揆をあのようにして破るとは思いもしない。

あの巨大カタパルトは、有用な武器ぞ。

見た配下の者に作らせているが、中々難しいであろう。

ああ、どうしても欲しい。




「攻め落とせ!!この戦に織田の運命が掛かっている思え!!」


中伊勢も、降伏した者には許してもかまわん。

早急に平定しないと、短時間で長島を落とした者に侮られてしまう。

織田の実力をみせねばならない。


被害を抑えながら中伊勢を平定出来たぞ。

残るは、南伊勢のみ・・・しかし、南伊勢は厄介だ。


南伊勢5群を支配し、大和宇陀郡うだぐんまで影響力を持つ北畠具教きたばたけとものりの抵抗が激しいだろう。


あやつは隠居したのに、北畠具房を裏から操っているに違いない。


「殿、朗報で御座います。武将・滝川一益たきがわかずますの調略で木造城の城主、木造具政こづくりともまさがお味方すると言ってきてます」


「それは良い知らせだ。滝川一益も中々やりおるな」


なんと木造具政の裏切りが早々にばれた。

怒った兄の木造具教は、木造城を包囲し攻撃する。


織田軍は、滝川、神戸氏、長野氏を援軍に送った。

織田軍本軍が到着するまで木造城は、なんとか持ちこたえた。

木造具教は、本軍到着前に逃げ帰った。


織田軍総出で北畠を襲った。




攻める先は、大河内城。


織田信長の考えでは、北畠軍の兵数は約8千と考えた。

力攻めでも勝てると踏んだ。


周りの城には、一切見向きもしない。


大河内城に居る北畠具房は、早々に籠城を決め込んだ。

難攻不落の城が自慢だったからだ。


木下秀吉きのしたひでよし、邪魔な阿坂城を攻撃して落城させよ。必ず成功させて戻って来るのだ。分かったな」


「は、はーー」


あの男ならやれるだろう。

百姓上がりだが、急遽きゅうきょ武将まで取り立てた。

わしに後がないように・・・


あの男にも後がないことは分かっていよう。

それだけの知略がなければ取り立てもしない。

わしの期待を満足させるのだ。



その知らせはすぐに来た。

1度目の攻撃は失敗したが、2度目の攻撃は果敢に攻め立てた。

1度目の失敗をものにしたのだ。

決断力に富み、物事を思いきってするようになった。


織田軍の木下秀吉が阿坂城を落城させる知らせは、全軍に伝わって大いに活気がわいた。




大河内城に到着した織田軍。

織田信長は周囲を駆け回って城の状況を把握。

命令を下す。


織田軍は四方より大河内城を包囲。城の周囲に柵を2重3重に作った。

竹や枝つきの木で粗く編んだ物だ。


兵は必死になって編んだ。


南は、織田信包おだのぶかね(信長の弟)、滝川一益たきがわかずます丹羽長秀にわながひで池田恒興いけだつねおきに蟻の出入りまで禁じた。

西は、佐久間信盛さくまのぶもり、木下秀吉。

北は、坂井政尚さかいまさひさ蜂屋頼隆はちやよりたか

東には、信長の本陣が置かれ、柴田勝家しばたかついえ森可成もりよしなりが守った。



信長は丹羽長秀・池田恒興・稲葉良通に夜討ちを命じる。

しかし雨が降り出して鉄砲が使用不能になったため後退。


「中々上手くいかぬ・・・」と呟いた。


信長は兵糧攻めを狙い、滝川一益に命じて多芸城を焼き討ちさせる。

さらにその近辺にも放火し、住民を大河内城へと追いやった。


作戦は上手くいった。


どうしても鉄砲の撃ち合いでは、城側が有利であった。

下から上に撃てば、威力は断然に減る。


城から撃ち下ろせば、威力は上がる。

それに壁で守られて撃てるのがいい。それに鉄砲の名手が何人か居るようだ。

雨が降っても屋根があるから撃てる。



「殿、一色義龍さまから援軍です」


「なんだと・・・」


書状を手渡された。

なんと差出人は帰蝶ではないか・・・


「三言さまから預かったライフル隊500人を御自由に使って下さい」なんと・・・


ライフル隊で山城にも有用なのか・・・試しに使ってみよう。



なんと、城の鉄砲撃ちが次々に撃たれて死んでるではないか・・・

あまりにも命中率に驚きが隠せない。


もう、ろくに鉄砲が撃てない者が撃っている。

それさえも無くなって「降伏する撃たないでくれ」と言って来た。

あまりにも呆気ないではないか・・・ああ、あのライフルが欲しい。



交渉を何度もして織田家と北畠家は和睦した。


この時の和睦の条件。


信長の次男である茶筅丸を具房の養嗣子ようししとすること。

大河内城を茶筅丸に明け渡し、具房、具教は他の城へ退去すること。

田丸城など周囲の城々は原形がとどめないまでに破壊すること。



大河内城の戦いは終わった。

北畠家は生き残ったが、もう支配は無理だ。

次男が支配して、伊勢の兵を織田が自由に使ってゆけるぞ。



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