第37話ここが甲賀、ここが伊賀
ああ、ここが甲賀なのか盆地状の高原だったとは・・・
なにやら道沿いに男達が居るではないか、１人、２人、３人・・・ああ、５３人も居るぞ。
俺は１人だよ。
殺しに来たのか・・・
「我ら甲賀を代表する五十三家で御座います。加賀さまに歯向かう気は一切御座いません」
そうなの、それならよかったよ。
目が血走ってたからね。うん、緊張してるのか、変な噂を伊賀から聞いたようだぞ。
伊賀と甲賀は、対立してるようにドラマでやってたな・・・
実情は違うみたいだよ。
２つの間では婚姻もしてたし、情報の共有もしてたらしい。
伊賀の乱の時だけ戦ったみたいだよ。
あれは仕方なかった。味方したら甲賀まで攻められたからね。
もともと、織田信長の息子が勝手に仕掛けた戦いだ。
手柄ほしさに・・・本当にバカ息子だよ。
それも負けて帰って来た。プライドの高い信長は、息子と伊賀に激怒した。
伊賀をそのまま放置できなかった。
放置すれば国々になめられるからね。
「お前たちは、薬に精通してるらしいな。この薬指南書を手渡そう」
「・・・・・・・・・」
「このような薬があるのですか・・・」
「なんだ。百地や服部から聞いてなかったのか、今では外科手術までやってるぞ」
「外科手術とは、なんで御座いましょう」
ああ、外科手術なんて、今の時代だとありえないよね。
思いだした。華岡青洲の妻って本を読んだよ。
乳癌手術を全身麻酔でやったのがはじめてらしい。
仕方ないので手術指南書を取りだして手渡したよ。
「これは、凄い」
皆して回し読みだよ。
なんせ２５巻にもなる手術指南書だからね。
ほらほら刀傷の縫合術、痔、
人体の骨格から臓器に至ってこと細かく描写。
臓器の機能まで説明。
そんな甲賀衆の家に寄ったんだ。
なんと、甲賀屋敷を土塁や堀で囲んで、いつでも外敵に備えた。
城館や城砦で、これでもかと防御に徹してるよ。その数は１００も超えてたね。
その中で大きな館で、お茶をだされた。
目の前で急須に茶葉と湯を注ぎ、２つの湯飲み茶碗に注がれる。
「粗茶で御座います。好きな方をお選びください」
すかさず手前の茶碗を取ったよ。
「某が先に飲みましょう」
あ、一気飲みだよ。
俺の茶碗は、ちょっと熱いな・・・「フウフウ」して飲んだ。
「伊賀国の伊賀者が、全て従うと聞きましたが・・・」
「そうなんだよ。頑固者が多かったけど、百地と服部の暮らしぶりを見て気が変わったみたいだ。そっちも忍者軍団とよろしくやってくれたらありがたいね。えこひいきはしないから」
「そのお言葉、有り難く存じます。末永くお仕えしていきます」
ああ、ここが伊賀なのか、山をへだてて甲賀なんだよね。
服部から聞いた話だと・・・
甲賀が六角氏に忠義を尽くしたのに対して、伊賀は金銭のみの契約みたいなものらしい。
雇い主との間に忠義心を持たない。まさにドライな関係だよ。
だから織田信長からも嫌われたのだろう。
仲間内で敵対同士に雇われた。そんな事実もあったらしいよ。
幼少の頃から厳しく鍛えられて育った。
なので体術に優れた忍者が多かった。
服部家の子供が山の中を必死に走ってたのも、伝統みたいなものだったらしいぞ。
ああ、忍者は大変だよ。
そんな伊賀忍者を１人、１人と面談することになったよ。
「某、
「そうか、ようやく仕官してくれるのか・・・」
「時代が時代なれば仕方なきことで御座います」
なに、いちゃもんつけてるのかな・・・まあいいけど・・・
「某、
鉄砲が得意なのか、言うからには相当な腕なのだろう。
「某、
なんと、あそこから逃げ帰ったのか・・・中々な逃げ足だよ。
それに甲賀とも親しいのか、売込みが上手いね。
「おいら、
町井貞信、植田光次などなども会ったよ。
一癖も二癖もある忍者達だったよ。
阿拝郡、山田郡、伊賀郡、名張郡の４郡になる伊賀国だ。
石高１０万石。
それにしても、これで伊賀の乱は無くなった。
あの時は大勢の非戦闘員も死んだらしいから良かった良かったよ。
しかし、織田軍が攻めて来て、それどころじゃーないな。
俺が知ってる勢力でないが頑張ってるみたいだよ。
伊勢５６.７万石を取れば、１００万越えだからね。
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