第35話上杉、佐渡へ行く




なんでこうなった。


真田幸綱が上杉政虎うえすぎまさとらと同盟を結ぶために交渉中にポロリと秘密を洩らした。

真田のおしゃべり野郎!


俺も悪かった。

会議中の会話でつい、佐渡島に金山がある事をポロリと話した。

まだ発見されてない金山だ。話に花が咲いたよ。

その話を真田はしてしまったんだよ。


それを聞いた上杉政虎は、驚愕きょうがくする。

名は、まだまだ謙信になってないよ。



今年、上洛して俺の領地を見て歩いたらしい。

関所がない事に驚き、町の繁栄にも驚いたらしい。



京では正親町天皇や将軍足利義輝に会った。

結構な金を持って行ったんだろう。



そんな話の中で、「しょうしょう金を使い過ぎた」


「いやいや佐渡には、金山が御座いましょう」と言ってしたった。


もう、タメ口で話をする友らしい。

武田のことも良く聞いたらしいぞ。



それで佐渡島を攻めると言い出したよ。

真田には、「船を貸せ。それを条件で同盟を結んでも良い」と言ったらしい。



ああ、船を貸し出すしかないよ。

俺も商人、紀伊国屋文左衛門としてついて行ったよ。



「なんとでかい船だ。帆がないぞ、これで動くのか・・・」


あんた、さっきからうるさいね。

後ろでは、上杉さまが腕を組んで船を見てるのに・・・


ここの港は、あまり深くない。

沖に停泊する船に、救命ボートで何往復もしたよ。


え!縄梯子なわばしごで昇れないって、情けない兵士だよ。

それに泳げないって・・・このベストタイプの救命胴衣を着ろよ。


「着方が分からないって、この穴に腕を通してから、前のファスナーをジャーって上げれば終わり」


「え!なんで・・・おかしいな」


お子ちゃまですか・・・1人、1人手伝う羽目に・・・

もう、世話がやけるぜ。


「オーイ!フックを下ろせ」


「・・・・・・」


「安全確認ヨシ!上げてくれ!!」


クレーン操作して救命ボートを引張り上げる。

またまた時間ロスだよ。



乗って出航したはいいが、案の定ゲロってるよ。

トイレや船の上から吐き出すなよ。汚いではないか、誰が掃除するんだ。


あ、双眼鏡で羽茂城はもちじょうが見えたぞ。

典型的な山城だ。見えないよう迂回。


羽茂城に近い場所へ上陸。

上陸を果たし終えた時には、日が暮れかかっている。


え!このまま羽茂城へ行く気なのか・・・

ああ、傾斜を転げ落ちたよ。「南無阿弥陀仏」




羽茂城の本間氏も、まさか城攻め合うとは思ってもみなかったのだろう。

あまりにも油断してたよ。


ああ、皆に手伝わして上杉自身が忍び込んだぞ。


それに続けて続々と忍び込む・・・お前らは、何者だ。


「お前は誰だ!曲者だ!!」


あ、上杉が首をかき切った。


もう、ドタバタと走りながら斬ったりしてる。

なんて刀さばきなんだよ。


1時間も建ったかな。あああ、城内で勝どきが・・・


「みな!!よくやったーーここの勝利を次の城攻めにも、勝利だーー!!」


「オーー!!オーー」


持って来た握り飯を食って寝てしまったよ。

この切り替えの早さはなんなんだ。




朝早くから飯の仕度をしてるよ。

かゆにどっかから採取した草など放り込んだぞ。

そこに塩も入れたようだ。


え!食べてみると案外うまいぞ。おかわりダメなんだ・・・



朝飯が終われば、もう走り出してるよ。

昔の人は元気だよね。車もないから仕方ないのか、持久力が半端無いぞ。



次の雑太城さわだじょうは油断してないぞ。


丸見えだから・・・


ええ!蟻が群がるように総攻撃をしてるよ。

又も先頭で1番乗りしたのが上杉だ。

槍で叩かれるのをガシッて掴んで、後ろへブン投げた。

掴んだ槍を敵兵に投げつける。グサッと首に突き刺さったよ。


多少の被害も出たようだな。

捕まえた捕虜に、こんこんと説教してるよ。


知らないおっさん達が来てたね。

奥で話し合いしてた。佐渡の人みたいで降伏すると言ってるよ。

金山が発見されても文句はいいませんって・・・


河原田城かわはらだじょうを攻めなくていいんだ。


そして、ここで1泊したよ。

上杉は、まんじりともせず、その夜を過ごしたみたいだ。

何となく分かる気がする。



ああ、今度は金山探しだよ。


相川金銀山を発見。金や銀も取れるんだ。

北山でも金脈が発見。めちゃくちゃな成金だな。


これで金が1年間に400キロ以上、銀は1年間に1万貫(37.5トン)。

順調に開発できた場合だ。


昔は、無宿人を佐渡送りにしたもんだよ。

金堀には使わないよ。技術が無いからね。

穴から湧き出る水を外に出すのが仕事だ。

基本的には無期。恩赦おんしゃで放免することもあったらしい。


▼金の回収手順

①鉄のハンマーで鉱石を砕く

②石臼で更に細かくすりつぶす

③すりつぶした鉱石を水と一緒に下に引いてある布の上に流して、布につた金を回収する


▼製錬

金銀と鉛をいっしょに炭火で溶かす。金銀と鉛の合金をつくる。

それを灰を敷きつめた鉄鍋で熱する。鉛が灰にしみ込んで金銀だけが残る。

この作業は「灰吹法はいふきほう」。

金銀の合金を金と銀に分けるために、硫黄をくわえて「硫黄分銀法いおうぶんぎんほう」や塩を用いる「焼金法やききんほう」の2つの方法を5回も繰り返す。

金の純度を(66~87%)まで高める。その後は小判にすればいい。


焼金法:銀が塩と反応して塩化銀となって金と分離。



「さあ、用は終わった。帰るぞ」


え!もう帰るの・・・こっちにも準備が必要だよ。

こっそりモールス信号で船に知らせた。

前もって言ってよ。


ここには、昼頃に到着。

港には接岸出来ないよ。どこに浅瀬があるか分かってないからね。


又も往復作戦を開始だ。

50人ぐらい残るらしい。



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